最初の開局当時から2/3λヘンテナが好きで、これまでに何度か作った。
でも、これがほとんど知られていない様子。ということで、シミュレートして比較してみる。
標準のヘンテナ
ヘンテナの構成は、長辺が1/2λ、短辺が1/6λ、給電点が長辺の一端から0.15~0.2λというのが標準。給電点の位置を動かして調整する。これは、1λのループにマッチング用のスタブが付いた形と解釈できる(jh8jnfさんに教えてもらった)。
433MHzで各寸法を計算するとこうなる。
波長 | 長さ[m] |
---|---|
1 | 0.693 |
1/2 | 0.346 |
1/6 | 0.115 |
0.2 | 0.139 |
0.15 | 0.104 |
シミュレート、その1
これで433MHzでマッチングが取れているわけだけど、各部の長さは標準の計算値よりも短い。特に、給電点は標準値の0.139~0.104mからだいぶズレて0.06m。
シミュレート、その2
全体的に長さを若干いじったパターン。
エレメントを長辺も短辺も少し長くしたもの。それにともなって給電点がズレる。長辺は標準の計算値よりも若干長め。短辺は標準値よりも短い。
両者の比較
上の二つを比較すると、後者のエレメントが長いほうが利得が高い。前者が5.2dBiに対して、後者は5.23dBi。まぁ、誤差の範囲かもしれないけど。またバンド幅も広がる。SWRが1.5以下の範囲が、前者は5.35MHz、後者は5.89MHz。このことから、エレメントが長めの方が性能は良いと言えそう。
2/3λヘンテナ
こちらは、その名が表す通り、長辺を2/3λとしたもの。給電点は長辺の中央になる。短辺は基本的には標準と同じ。
各寸法を433MHzで計算するとこうなる。
波長 | 長さ[m] |
---|---|
1 | 0.693 |
2/3 | 0.462 |
1/6 | 0.115 |
早速シミュレート。
計算どおりとはいかないが、これでマッチングが取れた。
標準タイプに比べてゲインは若干高く5.5dBi。もう少し高くなるのかと思っていたけど、そうでもなかった。
それよりも特筆すべきは帯域の広さ。SWR 1.5以下が13.2MHzもある。430MHz帯を丸々カバーできる。また、帯域が広いということは、少々ラフに作っても大丈夫、再現性が高いとも言える。このあたりが、2/3λヘンテナを気に入っている理由。
その他としては、標準タイプだと若干の水平偏波分も見られるが、2/3λだとそれはない。サイドの切れ、と言うか、切れなさはどっこいどっこい。
ちなみに、2/3λヘンテナの給電部の長さをゼロにし、他のエレメントの長さや形を調整するとツインループアンテナやツインデルタループアンテナになる。ツインデルタループではサイドがバッサリ切れる。詳しくはこちらの記事。
リアルグラウンドでのシミュレート
これまでは自由空間でのシミュレートだったので、最後にリアルグラウンドの様子も見ておこう。地上高は5mとしてみた。それ以外はそのまま。
標準タイプ
2/3λヘンテナ
どちらもゲインが高くなった(10.21dBi、10.54dBi)。Z軸のマイナス方向に消えていたものが上に出てきたのだろう。SWR 1.5以下の帯域はほんの少しだけど広がる傾向。
まとめ
ヘンテナの調整って実は結構シビア。6mのヘンテナを実際に作ったことがあるけど給電用のエレメントを何度も動かした思い出。仮設ならクリップ等で動かせるようにしておけばいいだろうが、常設だとしっかり固定したいので、そのときはハンダ付けして大変だった。
一方、2/3λヘンテナは給電ポイントは中央なので「ずらして調整」はない。調整するとなるとエレメント全体の長さを買えることになる。しかし、低SWR帯域が広いので、寸法通りに作れば無調整で実用できる。実際、これまで作った2/3λヘンテナで調整したことはない。
ということで、ほぼ無調整でSWRが下がり、ゲインも若干ながら高い2/3λヘンテナ。ぜひ、試してみてください。バランを付けるなら、分岐導体バランがお手軽です。
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