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FDBM01 – F2Aセミブレークインアダプタ

頒布は終了しました

概要

F2Aでセミブレークイン通信を実現するアダプタです。

F2A、つまり、低周波トーンをFMの音声信号に乗せて行うCW通信では、電鍵をつないだ低周波発振器マイクの代りにつなげば送信できます。とても簡単ですので、すぐにでも実験できると思います。

F2Aなどのモールスの送信を行うには、第三級アマチュア無線技士(以上)の資格が必要です。また、低周波発振器をマイク端子に接続するには届出も必要です。

しかし、手軽にできる一方、実用的なCW通信としてみると不満があります。例えば、PTTの代りとしてトグルスイッチなどをつけた場合、送受切替のタイミングでいちいちスイッチを操作しなければなりません。また、サイドトーンも問題です。受信音をヘッドフォンで聞こうと思うと自分の送信音が聞きづらいです(送受切換えの度にヘッドフォンを付け直すとか)。

もっと手軽にできないでしょうか?A1Aの(セミ)ブレークインのように、電鍵を操作するだけで送受も切り替えてくれるように。

電鍵の操作に合せてPTTをon/offすれば良さそうですが、実際にやるとFM特有の問題が出てきます。つまり、受信側のスケルチが開かないと信号が聞こえないのです。受信機は信号を受信してからスケルチが開くまでに若干のタイムラグがあります。送信側が送信開始で即信号を送ると、相手のスケルチが開くまで頭切れを起こしてしまいます。

送信側も、送信に切り替わってから実際に変調がかかるようになるまでにタイムラグがあるかもしれません(リグによる)。通常は音声ですから問題にならないでしょうが、CWのトーンだと問題が起きる可能性があります。

また、PTTは電鍵off後も一定時間保つ必要があります。

別の点では、ヘッドフォンを使った運用を考えると、リグからの受信音と自分のサイドトーンのどちらも聞こ得るようにしたいです。

これらの不満を解消すべく作ったのが、この装置です。実際の動作の様子は下のビデオをご覧下さい。

左のハンディ機が送信側(本アダプタに接続)、右のハンディ機が受信側です。わかりやすいように、遅延時間を長めに設定しています。最初に聞こえるトーンが本アダプタからのサイドトーン、それに続いて聞こえるのが受信音です。また、LEDの点灯にも注目して下さい(緑のLEDが送信中はオレンジに、青LEDは実際に送信するトーンのタイミングで点滅)。

特徴

F2Aでの運用で「不便だな」「あったらいいな」と思うものをどんどん詰め込みました。その結果、回路規模が大きくなり、組み立てるのが大変になったため、多くの部品は予め実装しています。

  • 電鍵操作だけで送受信を切り替えるセミブレークイン操作
    • 頭切れ防止のため、送信トーンの遅延機構(0~1秒可変)
    • 送信状態(PTTオン)ホールド時間も可変(0~1秒)
  • 一部のハンディ機とはケーブル一本の簡単接続
    • 八重洲のスピーカ・マイクの4極端子ならケーブル一本
    • アイコムの2.5/3.5端子用のアダプタも用意
    • その他のハンディ機やモービル機用の汎用端子あり(ケーブルは自作で)
  • スピーカ内蔵
    • リグからの受信音と本装置のサイドトーンを出力
    • 外部スピーカ、ヘッドフォンにも対応
  • マイク端子あり
    • 電話送信の場合もいちいちつなぎ直すことなく、すぐに送信可能
    • マイクアンプ内蔵(ゲイン可変)
  • モニタ用ライン出力あり
    • PCに接続してCWデコードなどに利用可能
  • 電源電圧は5~13.8Vの広範囲対応
  • ケース付きキット
  • 基板はほとんどのチップ部品は予め実装済み
  • サイズは、100×77×23.2 mm(突起物は含まず)

使い方

各部説明

前面パネル

左から順に下記のとおりです。

  • Delay Moni.: 送信トーンモニタ。電鍵操作から遅延したタイミングで点灯します。
  • Ext. Key: 電鍵接続端子。ストレートキーやエレキーの出力を接続します(本装置にはエレキー機能はありません)。
  • PWR/On Air: 電源兼オンエア表示。電源投入で緑に点灯します。送信時はオレンジになります。
  • Mic: 4極のスピーカ・マイクを接続します。八重洲やアルインコのハンディ機用のものが使用できます(マイクだけでスピーカには対応していません)。
  • Vol.: 電源スイッチ兼音量ボリューム。
  • Phones: ヘッドフォン/イヤフォン端子。BTL出力(金属部はGNDではありません)。
  • Supaker/Phones: スピーカ/ヘッドフォン切替スイッチ。

背面パネル

左から順に下記のとおりです。

  • DC: 電源ジャック。
  • Ext. Speaker: 外部スピーカ端子。BTL出力(金属部はGNDではありません)。
  • Line Out: モニタ用ライン出力(PC等への接続用)。
  • To RIG: リグ接続端子。
    • RJ45: 汎用端子
    • 3.5mm/4極: アルインコ、アイコム、八重洲のハンディ機用
  • スライドスイッチ: アルインコ、アイコム、八重洲のハンディ機用の切替え。
  • Key Out: 電鍵出力端子。

上面パネル

  • Mic Gain: マイクアンプのゲイン(音声用)。
  • Tone Level: 送信トーン信号のレベル。
  • Side Tone: サイドトーンのレベル。
  • Tone Deley: トーン信号遅延時間(0~1秒)。
  • PTT Hold: PTT(送信状態)保持時間(0~1秒)。
  • (内蔵スピーカ)
  • Tone Freq.: トーン信号周波数。

本アダプタ以外に必要なもの

最低限として、下記のもの必要です。

  • 電源: DCジャックは2.1/5.5mmの標準的なものです。センタプラス。5~13.8V(200mA以上)。
  • リグ接続ケーブル: 接続するリグに合わせて用意します。
    • 八重洲のハンディ機(4極マイク): 3.5mmの4極ストレートケーブル。市販の汎用ケーブルが使用できます(オプションとしても用意しています)。
    • アイコムのハンディ機(2.5/3.5マイク): 4極ストレートケーブルと変換アダプタ(オプションで用意しています)。
    • アルインコのハンディ機
      • 4極マイク: 4極ストレートケーブルと変換アダプタ(オプションで用意しています)と市販の変換ケーブル。DJ-G7等の防水仕様のものは通常の4極ケーブルが挿せないため、メーカオプションの4極 – 2.5/3.5変換アダプタ使用します。
      • 2.5/3.5マイク: 4極ストレートケーブルと変換アダプタ(オプションで用意しています)。
    • その他のハンディ機やモービル機等: 汎用端子を使って接続(ケーブルは自作して下さい。製作編を参照)。
  • 電鍵(またはエレキ―): 接続端子は3.5mmのモノラルジャックです。

その他、必要に応じて用意して下さい。

  • マイク: 八重洲のハンディ機と同様の4極仕様。汎用品(特小用?)も使えます。
  • ヘッドフォン、イヤフォン
  • 外部スピーカ
  • ライン接続ケーブル: PCのライン/マイク端子との接続用。
  • 電鍵ケーブル(出力用): 電鍵出力が取れるようにしてありますが、通常は使わないと思います。

接続方法

模式的な接続図を示します。この他に少なくとも電源が必要です。マイクやヘッドフォンなども必要(好み)に応じて接続して下さい。

本アダプタにつなぐ電鍵は縦振れのものやエレキー装置の出力です。本アダプタにはエレキ―機能はありませんのでエレキーのパドルをつなぐことはできません。

八重洲ハンディ機(4極マイク端子)

最もシンプルなケースです。4極のケーブルだけでつなげられます。スライドスイッチをYAESUの位置に合せてください。

アイコムハンディ機(2.5/3.5マイク端子)

4極ケーブルを2.5/3.5に変換してつなぎます。スライドスイッチはICOMに合せてください。

アルインコハンディ機

DJ-S12やDJ-S42などの2.5/3.5端子のものは、上のアイコムのハンディ機と同じ接続で大丈夫だと思います(実機未検証)。スライドスイッチはALINCOに合せてください。

DJ-G7やDJ-S57などの防水ねじ込み式の4極ジャックには通常の4極プラグが挿せません。そこで、変換を二段階行います。無線機側の2.5/3.5ジャック-4極プラグは市販の変換ケーブルを用意して下さい。スライドスイッチはALINCOに合せてください。

アイコムのOPC-2132も使えます(上の写真はこれです)。

その他

ケンウッドのハンディ機や他社でも古いハンディ機のようにPTTが独立した接点のもの、あるいはモービル機の場合は、汎用の接続端子を使用します。ケーブルはリグに合せて自作してください。

スライドスイッチは使用しません(どの位置でも構いません)。

汎用接続端子と4極接続端子は同時には使用しないでください。両方にリグを接続するとトラブル(故障)の原因になります。

動作実績

  • アイコム
    • ハンディ機: IC-S35, IC-3N(汎用端子接続)
  • アルインコ
    • ハンディ機: DJ-G7
  • ケンウッド
    • モービル機: TM-441, TR-751
  • 八重洲(スタンダード)
    • ハンディ機・ポータブル機: FT-2D, FT-70D, VX-2, VX-3, FT-818ND(結線図
    • モービル機: FTM-6000(結線図

操作方法

まず、一番最初は、上面パネル上のボリュームはすべて中央(12時方向)にしておいて下さい。その後、以下の説明をご覧の上、好みの状態に調整して下さい。

電源投入・基本操作

正面の電源スイッチ兼音量のツマミを回すと電源が入ります。その際、緑LED(電源パイロットランプ)が点灯し、青LEDが「・ー・」のタイミング(Readyの「R」の意味)で点滅します(音は出ません。LEDだけです)。

電鍵を操作するとPTTがオンになり(LEDがオレンジに点灯)、サイドトーンも聞こえます(調整は下記)。所定の遅延時間でトーン信号がリグに送られ、また、そのタイミングで青LEDが点滅します。

サイドトーン

電源を投入して電鍵を操作するとスピーカやヘッドフォンからトーンが聞こえます。スピーカとヘッドフォンの切り替えは正面パネルのトグルスイッチで行います。ヘッドホンをつないだままでもスイッチで切り替えられるので(使い方によっては)便利です。

サイドトーンのレベル(音量)は上面のSide Toneボリュームで調整できます。リグからの受信音の音量とのバランスが良い(聞きやすい)位置に合せてください。なお、レベルを上げすぎると音が歪みますので、歪まない範囲でお使いください。

トーン信号の周波数は、Tone Freq.の穴にドライバを差し込んで好みの音に調整して下さい。

【電源電圧に関する補足】

供給する電源電圧が13.8V等の高い場合、フルボリュームでサイドトーンを連続音でスピーカを鳴らし続けると三端子レギュレータが非常に高温になります(数十秒で指で触れなくなるレベル)。供給電圧が高い場合はボリュームは控えめにして下さい(フルボリュームではやかましすぎるので使うことはないとは思いますが、念のため)。

ヘッドフォンの場合はフルボリューム連続音でも三端子レギュレータはさほど高温にはなりません(爆音ですので、これも使うことはいと思いますが)。

通常の操作では数十秒を超える連続音での使用はないとは思いますが、何らかのトラブルで連続キー押下はあるかもしれませんので、注意事項として記しておきます。

もし、爆音でスピーカを鳴らすなら、供給電圧を9V程度までに抑えておくと安心です(内部は5V動作ですので高い電圧を供給すると超過分が熱になるだけです)。

供給電圧が高めであっても、通常の運用(音量はそこそこ、長時間連続音はなし)なら三端子レギュレータは高温にはなりません。三端子レギュレータの周りの放熱スペースに銅板等を立ててハンダ付けしておくと多少は放熱効果が高まると思います。

また、電源電圧5V供給でも動作しますが、内部に5Vのレギュレータを入れているため供給電圧が5Vの場合はスピーカの音量によって内部電圧が変動します(フルボリュームで4.5Vくらいまで下がる)。運用に差し支えないとは思いますが、一応、留意してください。

メーカ品ならこんな仕様にはしないでしょう。おそらく、「6~9V」あたりに設定するのではないかと。でも、そこはアマチュアが理解した上で使用する自作品ということで。

トーン送信

可能であれば、別のリグ等でモニタして調整して下さい。

ディレイ時間

Tone Delayボリュームで送信トーン信号の遅延時間を調整できます。調整範囲は0~約1秒です。受信側が頭切れを起こさない程度に遅らせます。

PTT保持時間

トーン信号の送信後、送信状態を保持する時間を調整するのがPTT Holdボリュームです。電鍵の操作に合せて、好みのタイミングで受信に切り替わるように調整して下さい。

トーンレベル

マイク端子に入力するトーン信号のレベル調整がTone Levelです。上げ過ぎると音が歪みますので、受信側で聞きやすい位置に調整して下さい。

マイクによる音声送信

本装置に接続したマイクのPTTを押すとマイクからの音声が送信できます。Mic Gainでレベルを調整できます。これも受信側で聞きやすい位置に合せて下さい。

なお、電鍵操作による送信ではマイクからの音声は送信されません(トーン信号だけが送信されます)。音声を送信する際は、マイクのPTTスイッチを押して下さい。言い換えると、マイクを挿したままでCWの送信を行っても、周りの音が送信されることはありません。

リグからの受信音

リグからの受信音も本装置から聞こえます。サイドトーンの音量とバランスが良くなるように、リグの音量を調整して下さい。

免許

本アダプタを使用してモールス符号による通信を行うには免許の変更申請(変更届)が必要です(もちろん、適切な資格も必要ですが、それは取得していることが前提です)。


【追記】2023年9月25日以降、届出等の手続きは不要になりました。

すでに3VF/3SF/3VA/3SAの指定を受けている送信機を使用する場合

低周波発振器を接続する旨の変更届を行います。送信機系統図が必要です(中国総通に確認済み)。下の図は、アルインコDJ-G7の場合の例です。

工事設計書にはF2Aも忘れずに記入します。

上記内容に関しては、中国総通に確認しました。回答を引用しておきます。

既に3VAや3SAの指定をうけている場合は変更申請ではなく、
変更届(事後手続き)を提出してください。
送信機系統図及び附属装置の諸元の提出は必要です。

なお、工事設計書の詳細入力が必要です。
送信機単体で発射可能な電波型式にF2Aを足したものを入力してください。

低周波発信機を接続する旨を備考に記載するような
簡素化された手続きでは行えません。

上の引用にもあるとおり、変更届は「事後手続き」です。したがって、運用を始めてから届け出れば大丈夫です。

なお、3VF/3SFの指定を受けている場合でA2Aも行いたいなら、3VA/3SAへの変更申請が必要です(指定事項に変更が生じるので、変更届ではなく変更申請になります)。

現に受けている指定が4VF/4SFの送信機を使用する場合

低周波発振器を接続し、3VF/3SFへの変更申請を行います。送信機系統図や工事設計書については上の例と同様です。A2Aも行うなら3VA/3SAへの変更となります。

新たに送信機を増設する場合(新規開局を含む)

技適機の場合

まず初めに3VF/3SFの一括コードで変更届を行います(無線機の取説を参照)。

その後、低周波発振器を接続する旨の変更届を行います。届出の内容は、上の例で示したとおりです。

送信機の追加も付属装置も変更届ですが、一度に済ませることはできません。二段階の手順を踏む必要があります。一度で済ませようとすると、技適を外れてしまうので保証認定が必要になり、かえって煩雑です(保証認定料も必要です)。

さらにA2Aも行うなら、別途、3VA/3SAへの変更申請が必要です。

こちらも参考にしてください。

非技適機の場合(旧技適機、JARL登録機種、自作機)

保証認定が必要です。低周波発振器を接続した状態での送信機系統図を添付して行います。A3E対応機であれば、A2Aも含めて3VA/3SAとして一度の申請で済みます。

補足

モールス符号と音声を同時に送信すると電波の型式はF9Wになります(AMの場合はA9W、SSBの場合はJ9W)。これは一括コードに含まれない型式ですので、別途申請が必要です。

同時送信ではなく、交互に送信するならF2A・F3Eで大丈夫です。F2Aの送信中に意図せずに混入した音声はノイズ扱いです(逆も同様)。本アダプタに限らず、他のアダプタを使ったり、マイクの前で低周波発振器を動作させる場合でも起き得る状況です。

これについては中国総通に確認済みです。

余談ながら、トーンスケルチ(レピータを含む)はトーンの断続や組合せで情報を伝達するものではないので電波型式の変更(追加)追加は不要という扱いです。これも中国総通に確認済み。

製作編

ここでは、本機を組み立てる際に注意すべき点について記します。

いきなり作り始めず、まずは、全体の流れを掴んでください。手順のイメージが掴めてから始めた方がスムーズに進むと思います。

回路図と部品表

回路図と部品表はPDFで用意しております。

部品表のチェック欄に記入のあるものは実装済みの部品です(または、実装しないもの)。

V.0.9とV.1.0の主な違いはアンプICの変更です。採用していたものが入手できなくなったことによる設計変更です。装置としての機能的な違いはありません。

基板

チップ部品は、ほぼすべて実装済みです(V.1.0基板では一点だけ、V.0.9基板で三点のチップ部品が未実装)。この状態で100点以上のチップ部品が搭載されています。

チップ部品で未実装のものは以下のとおりです。

  • V.1.0基板(一点)
    • 三端子レギュレータ(U1)
  • V.0.9基板(三点)
    • ポリフューズ(F1)
    • 三端子レギュレータ(U1)
    • アンプIC(U6)

また、V.0.9基板のトランジスタ(Q3)は、当方で載せ替えました(V.1.0基板では修正済みです)。詳細はこちらの記事をご覧ください。

基板組立

一気に組み立てるとトラブルが起きた場合に原因を見つけるのが難しいので、ブロックごとに動作を確認しながら組んでいきます。

電源部

赤で囲った範囲です。と言っても、チップコンデンサ等は実装済みですので、取り付けるのは、三端子レギュレータ、電解コンデンサ(2個)、DCジャック、ボリューム(電源スイッチ)だけです(V.0.9基板ではポリフューズも取り付けます)。

DCジャックの足は長すぎるので切ります(切らないと底板に当たります)。また、基板から浮かないよう(基板との間に隙間ができないよう)気をつけてください。浮いてしまうと、パネルがはまらなくなります。

この他のジャック類も同様、浮かないよう注意して取り付けてください。

三端子レギュレータのタブは広いGNDにハンダ付けしますので、コテの熱が奪われやすいです。太めのコテ先でしっかり熱を加えて付けてください(おそらく、想像より大変です)。ヒートガンやヘアドライヤ等で基板全体を予熱するのも良い手です。

V.0.9基板ではポリフューズ(F1)の取付けも忘れないように。

まず、電源をつなぐ前に、VccとGNDの間がショートしていないことを確認します。同様に、5VとGNDの間もショートしていないことを確認します。テストの前には、必ずこのチェックを行ってください。余計なトラブルを防ぐためです。もしショートしていたら、どこかにハンダブリッジや配線クズが張り付いていたりということが考えらますのでチェックしてください。

ショートしていないことが確認できたら、適当な電源をつなぎます。電圧は5~13.8Vの範囲のものを用意してください(センタプラス)。電源をつないだらスイッチを入れます。Vccには接続した電源の電圧が、5Vには約5Vが出力されます。電源電圧が5.5V以上なら、ほぼ5Vが出力されるはずです。電源電圧が5Vの場合は、出力電圧は4.5V程度になります(動作には問題ありません)。

低周波発振部とバッファ

赤枠内が低周波発振部(送信トーンとサイドトーンの元)です。未実装部品を実装します(フィルムコンデンサと半固定VR)。

TP3をオシロスコープで見ると発振波形が見られるはずです。結合はACに設定してください。

ややいびつな形ですが、まぁ、それなりの正弦波のようになっていると思います。レベルは、peak to peakで200mV強、RMSで80mV程度のようです。発振周波数によって電圧レベルは変動します。発振周波数の可変範囲は、概ね500~900Hz程度です。

オシロスコープがない場合は、テスタのAC VレンジでTP3(とGND)をチェックしてください。概ね50~100mV程度の電圧になると思います(発振周波数によって電圧が変化するのは上述の通り)。

テスタの確認はあくまで参考程度です。安価なオシロスコープでも波形などが確認できるので安心でとても便利です。下は、DSO Shellという格安のオシロスコープでTP3を見た様子です。

DSO Shellについてはこちら

低周波発振部がOKなら、バッファ部(緑の枠内)も確認します。こちらは実装済みですので、チェックするだけです。

TP3とTP5を同時に観測すると、反転しているだけで、同じ波形が見られるはずです。

ミキサとバッファ

赤枠内です。例によってほとんど実装済みですので、取り付ける部品はフィルムコンデンサだけです。それと、テストのために、TP5とTP4を接続します。上の図の緑の線です。

TP7にはTP3とほぼ同じものが、TP8にはその二倍(かつ、位相が反転)が出てきます。下の図は、下がTP7、上がTP8です。

TP9にもTP8と同じ波形が出てきます。下の図のCH3(赤)がTP9です。CH2(TP8)とCH3は縦軸のスケールを二倍にしています。

アンプ部

V.0.9基板ではU6(アンプIC)を取り付けます(V.1.0基板では実装済みです)。取り付けに際して、周りをマスキングテープで覆っておくと良いと思います。フィルムコンデンサや半固定ボリュームもマスキングテープで覆っておくと、うっかりコテが当たった場合でも少しは安心かもしれません(下の写真では貼っていませんが)。

ICは向きに注意して下さい。

はんだ付け方法はこちらの記事を参考に。

先程のまま、TP5とTP4をつないでおけば、スピーカやヘッドフォンから音が聞こえるはずです(トグルスイッチで切替え)。

※上の写真ではスピーカをパネルに取り付けていますが、その必要はありません。

ここまで確認できたら、TP4とTP5に取り付けたジャンパ線は外します。

子基板

コントロール用の半固定抵抗を載せる子基板と、その受けのピンソケットを取り付けます。

J13、J16、J17はそれぞれ3ピンのソケットで、三つ並べて取り付けます。キットに添付の部品は二つのパターンがあります。

  • 3ピンソケット×3個
  • 9ピンソケット×1個

9ピンソケットの場合はそのまま取り付けるだけです。

3ピンソケットの場合は、それぞれ微妙に幅が広い(公差の範囲だとは思います)ようで、連続したピンヘッダに挿すとピンヘッダが歪んでしまいます。

これを解消するために、ピンソケットの側面をヤスリで削ります。割と柔らかいプラスチックなので、簡単に削れます。

歪まずに挿せるようになればOKです。

J13、J16、J17、および、J4、J6を取り付けます。

このままハンダ付けすると傾いてしまうので、ピンヘッダも挿して上に載る子基板もはめ込み、矯正具として使います。

上手く挿さっていることを確認したら、ピンヘッダとピンソケットをハンダ付けします。

さらに、半固定VRも取り付けます(もちろん、一旦、子基板を外して)。

ボリュームの位置は、すべて中央(12時方向)にしておきます。

半固定VRの足は三本ですが、基板の取り付け穴は四つ開いています。これは、二種類のVRに対応できるようにしたためです。基板上にも矢印を印刷していますので、それに合わせて取り付けてください。逆向きに差し込むとスムーズに入リません。無理に差し込まずに向きを180度変えてください。

JP2

まず、下の回路図の未実装部品(コンデンサ)を取り付けます。

JP2は基板の裏のハンダジャンパです。

基板裏面のJP2をショートします。ハンダを盛ってショートできるようにしていますが、JP1(基板表面、実装しないジャンパ)のスルーホールにハンダを吸い込まれでやりづらいかもしれません。スルーホールにコンデンサの足の切れ端などを入れてショートさせてハンダ付けする方が楽だろうと思います(私は、単にハンダを盛りましたが)。

JP1にピンヘッダを立ててショートピンでショートさせても構いません(キットには含まれません)。ちなみに、JP1をDelayの方にすると、サイドトーンで聞こえる音が送信音になります。つまり、キー操作から遅れたタイミングです。これを聞きながらキーイングすると気が狂うと思います。トーンの遅れを確認するためのテスト機能として用意したものです。

余談ながら、拡大して改めて見ると、全体的にハンダを盛りすぎですね。反省。

キー操作部

子基板を取り付け、J7に電鍵をつないで操作すると電鍵を押す度にTP8にトーン信号が出力されます。トーン信号のレベルは半固定VRのRV5(子基板上の上段右)で変化します。スピーカ等をつないでいれば、音も聞こえるはずです。

マイク出力部

赤枠内の未実装部品(コンデンサ)を取り付けます(これ以降も同様に、随時、未実装部品を取り付けます)

KEY_DLAY_AVRをHighレベルにするとTP12にトーン信号が出てきます。KEY_DLAY_AVRはTP2とつながっているので、ここをHighレベルの場所につなげばOKです。Highレベルの場所は、例えばR10, R7, C10の交点です。

R10, R7, C10の交点は基板の端にあるので比較的触りやすいとは思いますが、やりにくければTP1でもおそらく大丈夫です(電圧が低めですが、おそらくHighレベルとして扱ってくれるだろうと思います)。

TP2をHighレベルの場所に触れさせる度にTP12にトーン信号が出力されます。信号のレベルはRV6で変化します。

続いて、マイクアンプもテストしておきます。マイクをつなぐ代りに、TP1をTP8に接続します。J7につないだ電鍵を押した状態で、TP1を数kΩ(1~50kΩ程度)を介してGNDにつなぐとTP12にトーン信号が表れます(RV7で信号レベルが変化します)。適当な抵抗の手持ちがなければ、J11-Dのポイントを使っても良いです(FROM_RIG_SPEAKERのラインが4.7kΩ二つを介してGNDにつながっており、それはJ11のD端子に接続されています)。

LED

二色LEDは、足が短い方が緑です。所定の穴に差し込みます。電源を入れれば緑が点灯するはずです。ハンダ付け前でもランドに接触させれば点灯しますから、念のため確認しておくと安心です。

LEDは二つとも足を曲げて取り付けます。基板の表面から曲げるポイントまでは8mmです。パネルを仮付けして確認すると良いと思います。

その他の部品

残りの部品(ICソケットやスライドスイッチなど)を取り付けます。

これで基板は完成です。

IC(マイコン)を向きに注意してソケットに差し込みます。

電源を入れると、青LEDが「・ー・」のタイミングで点滅します(Readyの意味の「R」のつもりです)。

補足(J3)

J3は実装しません。これは、マイコンにプログラムするための端子です。プログラムは書込み済みのため、使用しません。

ケース

部材切分け

各部材を分けます。手で曲げれば簡単に折れます。上の写真はV.0.9基板です。側板についているユニバーサル基板はオマケです。土地が余ったので作りました。適当に使ってください。V.1.0基板では下のようにユニバーサル基板部はなくなり、子基板とオプションのコネクタ用の基板を付けています。

バリはヤスリがけしてください。側板の突起は天板と底板の穴と嵌合します。間違って削らないよう気をつけてください。側板の左右の区別はありません(つやがある方が外側です)。

側板と嵌合する天板と底板の穴ですが、加工の限界のため角がある程度丸くなってしまいます。そのため突起が上手く入らないことがあります。その場合は突起の角をヤスリで削って調整してください。削りすぎないよう、具合を見ながら削ってください。

同様に、突起の付け根も丸くなっています。天板・底板との間に隙間ができてしまう場合はここを削って調整してください。

組立て

天板にスピーカをネジ止めします。使うネジはM2.5x8mmです。裏からワッシャとナットを使って固定します。細いプラネジですので、締付けは程々に(簡単にねじ切れてしまいます)。なお、スピーカ用のケーブルは、調達の都合で非常に長い場合もあります。その場合は適当な長さに切って下さい。

底板にM3x10mmのビスを下から通りします。底板を裏返して上からビスを挿し、上にダンボール板などを載せてひっくり返すと簡単です。ビスにはM3x2mmのスペーサを付けます。

基板を載せ、M3x18mmのスタンドオフを取り付けます。この段階ではまだ締付けずに、緩く付けておきます。LEDキャップも忘れないよう今のうちに取り付けておきます。

前後のパネルをはめ込み、各ワッシャで軽く固定します(締めるのは後で)。LEDはわずかに飛び出す程度が良いと思います。

側板を立てます。光沢がある方が外側です(左右の区別はありません)。スピーカのコネクタも挿します。

天板を載せ、M3x6mmのビスで固定します。裏のビスも締めます。どちらもプラネジですので、締付けの力は程々に。また、各ジャックやボリュームのナットも締めます。これもあまり強い力で締め込まずに、弛まない程度に締めておけばよいです。ボリュームのつまみも取り付けます。

最後に裏にゴム足を貼り付ければ完成です。

リグ接続ケーブル

3.5mm 4極ストレートケーブル

八重洲の一部のハンディ機とは4極のケーブルだけで接続できます。市販のオーディオ用のものが使えます。手持ち品があれば、それを流用すると良いと思います。お持ちでない場合は、Amazon等で購入できます。検索結果のリンクを置いておきます。

https://www.amazon.co.jp/s?k=3.5mm+4%E6%A5%B5+%E3%82%B1%E3%8…

なお、必ず「4極」が必要です。検索結果には3極のものも表示されるようなので注意して下さい。また、無線機によってはプラグ部が細いものでないと周辺のつまみなどと干渉するかもしれないので、その点も確認して下さい。

オプション品(約1m)としても多少用意しておりますので、必要な場合は一緒にお申し込み下さい。

プラグの付け根がやや不安に思えたので、熱収縮チューブを被せてみました。おまけで入れておきます。

リグ接続ケーブルアダプタ(オプション品)

3.5mm・4極ケーブルを、2.5/3.5mm・各3極に変換するアダプタです。詳細は、接続図をご覧下さい。

品名数量
3.5mm 4極ジャック1
2.5 – 3.5mm ステレオケーブル1
結束バンド4
基板(V.1.0基板では本体側に添付)1
熱収縮チューブ1

2.5mm – 3.5mmのケーブルを切断し、被覆をむきます(中の線を傷つけないように注意)。ケーブル長さはお好みで(あまり長くしないほうが邪魔にならず、取り回しが良いと思います)。

それぞれ、ハンダメッキします。ポリウレタン被覆のようですので、そのままハンダコテで熱すれば被覆が溶けてハンダが乗ります。

しっかり熱をかけて確実に被覆を溶かしてハンダメッキして下さい。ケーブルの長さは充分ありますので、何度か練習することをおすすめします。ビデオも用意しましてみました。よく見ていると、ある瞬間にすっと被覆が溶けていハンダが染み込んでいく様子がわかります。

下の写真を参考に組み立てて下さい。2.5と3.5を間違えないように(もちろん、ケーブルの色にも注意)。

動作を確認してから、ケーブルを結束バンドで基板に固定し、最後に熱収縮チューブをかぶせておきます。

V.1.0基板ではスリムになりました(板取の都合でそうせざるを得なかったのが実情ですが)。配線は変りません。

結束バンドは下(裏)から差し込んで留めるのが良さそうです。最後に熱収縮チューブを被せます(コネクタ側はハサミで切って整えます)。

※写真はクリックで拡大します。

リグ接続汎用端子ケーブル

リグ接続汎用端子はLAN用のコネクタを流用しているので市販のLANケーブルが使えます。適当なものを用意して下さい。

ピンの割当てはPCWI01に合わせていますので、こちらの記事をご覧ください。なお、本機にはFSK端子はありません(Mic、PTT、スピーカ端子だけです。一応、念のため)。

プログラムの簡単な説明

製作とは直接は関係ありませんが、プログラムの動作について少し説明しておきます。と言っても単純な話です。

  1. 電鍵の状態を取得する。
    • 電鍵がオンならPTTをオンにする。また、PTTの保持タイマを所定の時間にセットする。
    • 電鍵の状態をメモリに保存する。保存場所は所定の遅延時間後に読み出す位置。
  2. メモリを読み出す。
    • 読み出した値にそって送信トーンを制御する。
    • 読み出した値がオンならPTTの保持タイマを所定の時間に(再)セットする。
  3. PTT保持タイマを減じ、0ならPTTをオフにする。

これを一定時間ごと(1ms)に繰り返しているだけです。CPUを積んだ今どきの無線機なら簡単に実装できる内容です。もし、採用したいメーカさんがいらしたらご一報を^^

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改造

音量ボリュームゴロゴロ音対策

音量ボリュームを回すと「ゴロゴロ」あるいは「ガサゴソ」というような感じの音が聞こえます。これの対策にはコンデンサを一つ追加します。詳細はこちらの記事をご覧ください。

謝辞

本装置の開発にあたり、JQ1ETVさんにご協力いただきました。感謝します。

頒布

頒布品はキット(部品セット)です。完成品ではありません。
ACアダプタ(電源ケーブル)は付属しません。別途用意して下さい(5~13.8Vで使用できます。詳しくは本文参照)。
  • 部品の調達の都合上、上の写真とは異なる場合があります。ネジ類も同様です。
  • コストダウンのため、ほとんどの部品は海外通販で調達しています(電解コンデンサは国産品)。
  • 基板(ケース)に若干の色ムラがあることがあります。格安基板製造サービスを利用しているため、ある程度は仕方ないようです(ひどい場合は作り直してもらっていますが、ゼロにはならないみたいです)。より高品質な製造サービスならきれいに仕上がるかもしれませんが、コストが大幅に上ってしまいます。ご了承下さい。
  • 本機のマニュアルは当ページがすべてです。紙媒体はありません。また、本機は電子工作の経験がある程度ある方を対象としております。抵抗のカラーコードやコンデンサの値の読み方など、基本的なところの説明はしていません。電子工作の基本については、こちらのページに参考になりそうなサイトなどをまとめてあります。
  • 資源の有効活用のため、梱包材は再利用することがあります。ご了承ください。
  • 仕様や頒布価格は予告なく変更することがあります。
  • 本機の組立てや使用による怪我・事故等には責任を負いません。

【価格】

  • 頒布価格: 7,200円
  • オプション
    • 3.5mm 4極ストレートケーブル: 350円
    • リグ接続ケーブルアダプタ(キット): 650円
    • USB電源ケーブル: 120円
  • 送料: 300円
  • 支払い方法: 銀行振込

オプションのUSB電源ケーブルはこちらです。なお、5Vで使用する際は、上記の電源電圧に関する補足をご覧ください。

【申込みフォーム】

※これは申込み専用フォームです。申込み以外(問合せ等)には使用できません。

こちらにご入力いただいたメールアドレス宛に、追って、振込先等をお知らせします。入力ミスのないようお願いします。また、ここにご住所等は書かないようにお願いします。

このフォームでお申し込みいただいた時点では、注文が確定されるわけではありません。タイミングによっては、在庫が切れている場合もあります。自動注文システムではなく手動での対応ですので、何卒、ご了承下さい。

※頒布は終了しました。

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