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秋月のRG58の中身

秋月で新たに扱い始めた「両端BNC RG58 10m」を切ってみたところ、中身が衝撃的だった。

いきさつ

こないだ、秋月電子のRG58 10mの特性を測ったという記事を書いた。

これに対して、Twitterでコメントを頂戴した。

RG-58/Uは特性インピーダンスがちょっと高くて、芯線も単線だという内容。そう、RG-58/Uは50Ω丁度じゃない。それは知っていたのだけど、あのケーブルには「50Ω」と印字されているので、先日の記事を書いたときにはその点は放置していた。芯線が単線だというのは見落としていたけど、改めていくつかのケーブルメーカの仕様書を見てみたら、確かにそうなっている。RG-58/Uの現物ってこれまで見たことがなかったこともあって、見落としていた。

以下、調べてみた仕様書。必要部分を抜き出して引用。

各社とも、RG-58/Uは特性インピーダンスが53.5Ωで、内部導体(芯線)は単線となっている。同じ名称なんだから同じなのは当たり前だけど。

切断して確認

そういうわけで、実際に中を見るべく切断してみた。

これはビックリ。

まず、RG-58A/Uだと外部導体(編組線)はスズメッキなんだけど、これはメッキなしの銅線。上記の各社の仕様書を確認するとRG-58/Uもスズメッキ線となっている(「T」がスズメッキ線を表している。詳細は、リンク先の仕様書で)。

そして、その編組線の下にはFBケーブルのようなアルミ箔。上記各社仕様書にはそんな記載はない。

内部導体(芯線)はメッキなしの単線。これは上記の仕様書と同じ。

このケーブルが硬いのは、芯線が単線であることと、アルミ箔によるのかも。

特性インピーダンス

前回はTDR測定で特性インピーダンスを見てみたが、今回は別の測定もやってみる。実は、ケーブルを切断する前にこの測定を行った。しかし、切断して中を見たらあまりにも衝撃的だったので、先にそっちを書いた。時系列で言えば、こっち測定のほうが先で、10mのままの状態での測定。

今回の測定は、オープンとショートでぞれそれのインピーダンス(Zo、Zs)を測定し、それからケーブルの特性インピーダンスを計算する方法。詳細はこちら

以下、実際に測定したもの。今回は6点(周波数)で測定してみた。左がオープン、右がショート。NanoVNAだと|Z|のグラフがないので、レジスタンスとリアクタンスを測定した。

表にまとめる。Zorはオープン時のレジスタンス、Zoxはオープン時のリアクタンス。ZoはZorとZoxから算出したオープン時のインピーダンス。ショート時のZsも同様。

周波数[MHz]Zor[Ω] Zox[Ω] Zo[Ω] Zsr[Ω] Zsx[Ω] Zs[Ω] Z[Ω]
7.546.1554.1254.473.14-40.8740.9947.25
22.964.40-27.1527.5015.2182.5383.9248.04
47.4013.7563.9265.386.60-30.3231.0345.04
87.1019.6368.8371.578.19-26.1327.3844.27
179.3055.28-94.86109.7911.8625.7328.3355.77
285.9056.6582.1799.8112.54-8.2114.9938.68

HF帯あたりでは、やや低めだけど、概ね50Ω。周波数が高い方ではインピーダンスがずれているが、周波数が高くなると減衰量が大きくなるので、反射波を上手く計測できていないのかもしれない(よくわからない。素人考えの域を出ない。そうであれば、ケーブル長を短くして測ればいいのかもしれないけど、今はそこまでは…。)。ともかく、この実験での測定結果はこうだったという記録。

前回のTDRによる測定結果でも、今回の測定結果でも、53.5Ωって言うことはなさそう。

まとめ

今回調査した秋月の「RG58 10m」のケーブルは、RG-58/Uとの印字があるけど、ちょっと違っていそう。

  • 外部導体がスズメッキされていない
  • 外部導体にアルミ箔もある
  • 特性インピーダンスは50Ωのようだ(RG-58/Uは本来は53.5Ω)

補足追記。

秋月の販売ページには「RG58」と記載されているけれど、「RG-58/U」とは記載されていない。リンク先のデータシートにもケーブルそのものの規格の記述はない(データシートはこの組立状態のもの)。「RG-58/U」との記載はケーブル上の印字だけ。

秋月電子 ⇒ 両端BNCケーブル 50Ω RG58 10m

一方、以前から扱われている青いケーブルの販売ページには「RG-58C/U(MIL/JAN規格準拠)」と明記されている。

秋月電子 ⇒ BNCケーブル 両端BNCオス 10m金 50Ω

また、前回と今回の記事は「調べてみたらこんなだった」というだけの話で、優劣については言っていない。

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