エレメントの太さによる影響の記事を書いたところ、「ステンレス はアンテナ線にあまり適さないと聞いた事があったのです」というコメントを貰った(Twitterで)。なるほど考えてみれば、ステンレスって電気抵抗率が高いのでアンテナとしてはあまりよろしくないのかもしれない。Wikipediaによれば、銅の抵抗率は1.68 ×10−8[Ω・m]、アルミは2.65 ×10−8であるのに対して、ステンレスは7.40 ×10−7とのことで、一桁違う。ちなみに、鉄は1.00 ×10−7で、銅とステンレスの中間(ちょうど中間よりも小さい)。
では早速シミュレーション、と行きたいところだけれど、MMANAのワイヤ素材の選択には「ステンレス」はない。
でも、「ユーザ設定ワイヤ」というのがあるので、これを使ってみる。
抵抗率と透磁率を入力するようになっている。抵抗率はWikipediaの先程のページにあるけれど、透磁率がわからない。ということで、検索してJX金属のページにあったSUS304の抵抗率(比抵抗)と透磁率を採用。なお、MMANAの抵抗率の単位はnΩ・mではなく、10-8であることに注意。
シミュレーション結果
諸条件等はこちらのものと同じ。
シミレーションは7MHzで。
ステンレス
3mm
1mm
0.5mm
鉄線
MMANAの選択肢に鉄線があるので、ついでにやってみる。
3mm
1mm
0.5mm
まとめ
ステンレスでの結果を見たときには「なるほど、やっぱり、抵抗が大きくてインピーダンスが下がりにくいのか」と思ったのだけど、鉄線はそれ以上に悪い結果。抵抗率は鉄の方が低いんだけど…。MMANAの使い方を間違えているのかなぁ…。
釈然としない結果(信頼性が低そう)ではあるけれど、先の結果と合せて表にしておく(SWR<1.5の帯域幅、単位はkHz)。
エレメント直径 | 無損失ワイヤ | 銅線 | アルミパイプ | ステンレス | 鉄線 |
---|---|---|---|---|---|
0.1 | 202 | 159 | |||
0.2 | 221 | ||||
0.3 | 231 | ||||
0.5 | 241 | 99 | — | ||
1 | 252 | 257 | 254 | — | |
2 | 277 | ||||
3 | 290 | 299 | 272 | ||
10 | 346 | 347 | 347 | ||
100 | 566 | 567 |
信頼性がどうかわからないけど、なんとなく、ステンレスだと細くなると抵抗が大きくなるので良くなさそうな雰囲気は分かる。帯域幅への影響だけでなく、放射効率も悪いんじゃないだろうか?とはいえ、ある程度の太さがあれば抵抗も大きくなく、気にならないかな?抵抗率が銅の4倍くらいなので、面積を4倍にすればいい?あ、表皮効果で考えれば、円周が4倍でいいのかな?だとすると、円周は直径に比例するので直径を4倍ってことか?疑問ばかりだ。
つづき
コメント
こんにちは。興味深い記事ありがとうございます。私、昔、園芸用のカラー針金をダイポールに使っていました。
当時の使い勝手は銅線よりも硬い為、もつれず、架設しやすかったです。
性能的にも違和感は感じず、気にはならなかったのですが。
実は今度、移動用ワイヤーアンテナのエレメントにホームセンターに売っているステンレスのより線ワイヤーを使おうかと思っていたところでした。
現在、2SQのIV電線を使っていますが、クセがついてもつれると解くのが大変です。
園芸用のカラー針金って素材は鉄でしょうか?
シミュレーションはシミュレーション、実際の使用ではまた違うところがあるのかもしれませんね。