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OS-CONは万能ではない?~Lとの組合せには要注意

電源のパスコンとして、アルミ電解コンデンサとOS-CONを使った場合の波形をシミュレーションで確認してみる。

回路

L1は配線による等価インダクタンス。10cm程度を想定。V1が電源。

ノイズとして電流源I1を設定。100mV、開始から1ms後、立上りが100ns、立下りも100ns(1ms後)、最後の20msは持続時間(ここでは特段の意味はない)。

配線インダクタンスによる影響

一般アルミ電解コンデンサ

ESR(等価直列抵抗)は0.5Ωを、ESL(等価直列インダクタンスは)20nHを想定。

OS-CON

ESRは0.012Ωを想定(16SEPF1000Mの値)。ESLはアルミ電解と同じとした。

結果は、暴れが大きくなった。

ルビコンの低ESRアルミ電解のZLHシリーズの35ZLH1000MEFC12.5X20は、ESRが0.017Ωなのでほぼ同じような傾向だろう。

Lを入れた場合

ノイズ低減目的で電源ラインに10uHを入れてみる。

一般アルミ電解コンデンサ

リンギングが収束しなくなった。

OS-CON

もっとひどいことになった。うねってもいる。ESRが低いので、制動が効かずにLとCとで発振?

一般アルミ電解コンデンサ+積層セラミックコンデンサ

0.1μFの積層セラミックコンデンサをパラ付け。ESRは20mΩ、ESLはリードタイプを想定して20nHとした。チップタイプならリード線がないのでESLは数nHだろう(ESRも少し下がる)。

リンギングはスッキリ消える。

OS-CON+積層セラミックコンデンサ

リンギングは消えるけれど、うねりは残る。とは言え、数mVppではあるが。アルミ電解と比較して、ノイズのピークが低いのと一瞬で収まるのが特徴(でも、うねりが生じる)。

容量を減らす

100μFにしてみる。

一般アルミ電解コンデンサ

リンギングが継続する。

確認のため、Lを抜いてみる(配線による等価インダクタンスだけ)。

これは問題ない。

OS-CON

うねっている。

こちらも(Lを抜いて)配線による等価インダクタンスだけなら問題ない。

一般アルミ電解コンデンサ+0.01μF

10μFのLを残したいなら、積層セラミックの容量を小さくすれば良さそう。0.1μFから0.01μFに変更。

期待通りにリンギングは消えた。

OS-CON + 0.01μF

これは残念ながらダメ。

Lを入れるなら、OS-CONは避けるほうが良さそう。

もしくは、微小な抵抗を直列に入れてダンプしてやるか。

でも、これだったら、一般アルミ電解コンデンサと変わらない。

電解コンデンサの種類と使い所

生成AIにまとめさせた(正確には、さんざん対話しまくって表にまとめた)。

回路と電解コンデンサ

回路の場所推奨コンデンサ (入手性◎)補足・代替案選定理由・技術的背景
DC-DCコンバータ出力スイッチング電源出力汎用・標準品
(85℃/105℃品)
低インピーダンス品は不可
(発振リスクあり)
【制動重視】
インダクタとのLC共振を防ぐため、ESR(等価直列抵抗)によるダンピング(制動)が不可欠。高価な低ESR品を使うと逆に回路が不安定になる。
リニアレギュレータ出力
(三端子レギュレータ等)
汎用・標準品【安定性重視】
レギュレータの発振防止(位相補償)のために、ある程度のESRが必要。あえて標準的なコンデンサを使うのが設計のセオリー。
オペアンプ電源
(電圧増幅段)
低インピーダンス品
(Nichicon HE/HW, Panasonic FR等)
標準品 + フィルム(0.1µF)【瞬発力重視】
信号の急激な変化に追従するため、内部抵抗が低い産業用「低インピーダンス品」が最適。入手性が良く、音の解像度向上に寄与する。
ディスクリートバッファ
(ダイヤモンドバッファ等)
汎用・標準品
(Panasonic FC等)
オーディオ用
(在庫があれば)
【安定性重視】
高速なトランジスタ回路の寄生発振を防ぐため、電源インピーダンスを下げすぎないことが重要。標準品が適度な「音の厚み」を作る。
DAC アナログ電源
(AVDD / Vref)
標準品 + フィルム(0.1µF)
(ハイブリッド構成)
導電性高分子ハイブリッド
(※要・発振確認)
【音質重視】
音の質感に直結する箇所。標準電解で低域の量感を、フィルムコンデンサで高域の伸びを確保する構成が、部品枯渇時代の最適解。
デジタル回路
(DACデジタル / マイコン)
導電性高分子 (OS-CON)
または 低インピーダンス品
【ノイズ除去重視】
デジタルノイズを強力に抑え込むには、OS-CONのような超低ESR品が必須。アナログ的な音質よりも、物理的なノイズ除去能力が最優先される。

【国産電解コンデンサ】主要メーカー別・現行シリーズ一覧

ここでは、入手難の「オーディオ専用品」ではなく、「産業用だがオーディオにも使える高性能品・標準品」 を中心に分類しています。

メーカー特徴・主力シリーズ具体的シリーズ名概要・用途
Rubycon
(ルビコン)
低インピーダンス品が非常に優秀
水系電解液の技術が高く、長寿命で信頼性が高い。
ZLH
(低インピーダンス)
【ド定番】
長寿命(6000-10000h)で高性能。オペアンプ電源のファーストチョイス。
音質はクリアで解像度が高い。
YXF / YXJ
(低インピーダンス)
ZLHよりマイルドな特性。汎用性が高く、アナログ・デジタル問わず使いやすい。
PX
(標準品 105℃)
【入手性◎】
現在最も手に入りやすい小型標準品。105℃対応で信頼性も高い。
アナログ回路のベースとして最適。
PK
(標準品 85℃)
ベーシックな85℃品。より穏やかな特性だが、最近はPXに置き換わりつつある。
Nichicon
(ニチコン)
オーディオ用と産業用の両輪
産業用でもオーディオ的な「明るい音」の傾向があると言われる。
HE / HW
(低インピーダンス)
ルビコンZLHの対抗馬。反応が良く、電源の瞬発力を稼げる。
青いスリーブが目印。
VZ / VR
(標準品 105℃/85℃)
どこにでもある標準品。黒スリーブ。迷ったらこれでOK。
VRは85℃品で、より穏やかな特性。
FG (Fine Gold)
(オーディオ用)
※例外的に記載。入手性が比較的マシなオーディオ用入門グレード。
金色のスリーブが特徴。
Nippon
Chemi-Con

(日本ケミコン)
世界シェアトップの実力派
茶色のスリーブ(KMG)が有名。真面目で堅実な特性。
KZE / KZH
(低インピーダンス)
産業用電源のド定番。ESRが非常に低く、デジタル回路やスイッチング電源に強い。
音はやや硬質でモニターライク。
KMG / KMA
(標準品 105℃)
茶色のスリーブ。これぞ「ザ・標準品」。
癖がなく、リニア電源やカップリングにも無難に使える。
KY
(低インピーダンス)
KZEより寿命重視のモデル。長期間安定させたい箇所に。
Panasonic
(パナソニック)
物理特性と信頼性の鬼
オーディオ専用品は撤退したが、産業用が極めて高性能。
FR / FM
(低インピーダンス)
驚異的な長寿命と低ESR。オペアンプ電源に使うと非常にクリアで現代的な音になる。
FC
(低インピーダンス)
ロングセラーの名品。FRより少しESRが高く(それでも十分低い)、
発振しにくいので自作派に長年愛されている。
OS-CON
(導電性高分子)
固体コンデンサの代名詞。デジタルノイズ除去においては最強の性能を誇る。
ELNA
(エルナー)
音響用コンデンサの老舗
独特の「響き」を持つが、産業用シリーズは地味ながら堅実。
RJH / RJJ
(低インピーダンス)
エルナーらしい、少し暖かみのある産業用グレード。
ルビコンやニチコンより流通量は少なめ。
RE3
(標準品 85℃)
青いスリーブの標準品。昔ながらのオーディオ機器によく入っている。
落ち着いた音調。

【選定のヒント】

  1. 「ZLH (ルビコン)」と「KZE (日本ケミコン)」は双璧
    • どちらも超高性能な産業用電源コンデンサです。これらを持っておけば、デジタル回路やオペアンプ電源で困ることはありません。
  2. 「標準品」の型番を覚える
    • ニチコンVZ、日本ケミコンKMG、ルビコンPK。これらは「普通のコンデンサ」ですが、アナログ回路の調整役として非常に重要です。これらでベースを作り、必要な箇所だけ高級品に変えるのがコツです。
    • ルビコンPX: 105℃対応になり、寿命と信頼性が向上しています。オーディオ的には85℃品(PK)の緩さを好む人もいますが、現代の電子工作ではPXを選んでおけば間違いありません。
  3. パナソニックは「FC」が便利
    • 最新のFRシリーズも素晴らしいですが、少し設計の古いFCシリーズは、性能と使いやすさ(発振しにくさ)のバランスが絶妙で、自作派には「とりあえずFC」という安心感があります。

あえて「定石破り」を楽しむヒント

先ほどのガイドは、あくまで「失敗しない(発振などのトラブルを避ける)ための安全策」に過ぎません。教科書通りの優等生的な設計です。
しかし、オーディオの面白さは、しばしば「教科書の外側」にあります。

  1. ディスクリートバッファに「低インピーダンス品」
    • 狙い: ガイドでは「発振リスクがあるから標準品」としましたが、あえてニチコンHEやパナソニックFRを入れてみる。
    • 期待できる変化: 音の立ち上がりが鋭くなり、低音のスピード感やパンチ力が増す可能性があります。「標準品だと少し眠いな?」と感じた時の特効薬です。
    • 対策: もし高域がうるさくなったり発振気味になったら、発振止めのベース抵抗を少し大きくするなど、回路側で調整すれば使いこなせます。
  2. オペアンプに「OS-CON」
    • 狙い: 禁断の組み合わせですが、成功すれば圧倒的なS/N感と解像度が得られます。背景の静けさが段違いになることがあります。
    • 期待できる変化: 現代的なハイレゾ音源の微細なニュアンスを極限まで引き出せるかもしれません。
    • 対策: 今回のシミュレーションで学んだ通り、「0.5Ω程度の抵抗を直列に入れる」(ダンピング抵抗)という技を使えば、OS-CONのネガ(発振)を消しつつ、その性能(ノイズ除去)を享受できるかもしれません。
  3. 異種混合(ハイブリッド)
    • 「標準品」と「OS-CON」をパラレル(並列)にする、なんていうのも面白い実験です。お互いの長所が生きるか、短所が出るか、やってみないと分かりません。

【結論:自分の耳が全て】

シミュレーションや理論は、あくまで「設計図」です。しかし、最終的に音楽を聴くのは「人間の耳」です。
理論的に正しくてもつまらない音になることもあれば、理論的には不安定でも、聴くとゾクゾクするような魅力的な音がすることもあります。

ガイドは「迷った時の地図」としてポケットに入れつつ、ぜひ自由に冒険してみてください。
「あえてOS-CONを入れてみたけど、意外と良かった!」 なんていう発見こそが、あなただけのオリジナルアンプを作る醍醐味ですから。

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