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NATEC MC100-SETを試す

ナテック社から「M-SMA型変換コネクタセット MC100-SET」の試供品が届いたので実際に試してみる。

メーカの公式ページはこちら。

MC100-SETとは?

これは、いわゆるMコネとSMAの変換コネクタがいくつかセットになったもの。特徴はインピーダンスの不整合をできる限り抑えていること。

同軸ケーブルは、通常、50Ωや75Ωとインピーダンスが決まっているが、M型コネクタやUHFコネクタはインピーダンスの規定がない。そのため、これらのコネクタを使うと不整合が生じる。

M型コネクタは、インチピッチネジのUHFコネクタをミリピッチに変更したもの。どちらでも使えるように作られているものも多いが、正確に作られたものだとネジが上手く嵌合しない。UHFコネクタという名称は、かつては30MHz以上をUHFと呼んでいたため。今は300MHz以上がUHFと呼ばれているけど、コネクタの名称(俗称?)はそのままになっているみたい。センタピンはバナナプラグが元になっているそうで、だからパナナプラグが上手くささる。この話はこちらの資料が詳しい。
M 型コネクターと UHF 型コネクターについて
https://ja3yaa.stars.ne.jp/old_pages/2022_02/clubhou/Hints_a…

NanoVNAの登場で高周波領域の測定が身近になったが、M型コネクタやUHFコネクタ(以下、まとめてMコネと表記)が入るとインピーダンスの不整合のため正しい測定が行えない。正確に測定しようとすれば、インピーダンスを正しくしたMコネとSMAの変換コネネタが必要になる。

それが、このMC-100SET(単品販売もある)。

まず、M-P – SMA-J。写真左のNATECの文字がある方がMC100、右が素性不明のもの。

続いて、M-J – SMA-J。こちらも左がMC100で右が素性不明品。MC100の方は中心導体の周りに何もない(中空というか)。

もう一つ、SMA-P – SMA-P。上のコネクタと組み合わせて使う。

測定の概要

メーカの公式ページ内の紹介ビデオにある、同軸ケーブルの先でキャリブレーションを行い(つまり、同軸ケーブルの先が校正面)、アンテナ(等価回路)を接続して測定する。MC100と素性不明コネクタを使った場合を比べる。下の図は、そのビデオから引用。

使用する同軸ケーブルは、第一電波工業のM410Rというもの。太めの同軸ケーブルが3mで細い同軸ケーブルが1mで、両端にMコネが付いている。モービル用として一般的なものだと思う。これもM-J側は「肉抜き」されており、インピーダンスに配慮したものになっているようだ。SWR計でもこうしたM-Jコネクタを見かける。

測定対象はアンテナの代りとしてRLC直接共振回路で、Mコネ付きたもの。共振周波数は、感覚としてつかみやすいように145MHz付近と430MHz付近の二種類を用意。

測定

150MHz

基準(同軸ケーブルなし)

まずは基準となるものを測定。同軸ケーブルなしで、このMコネの位置を校正面とする。

M-P – SMA-J変換コネクタを使ってNanoVNA-H4付属のキャリブレーションキットを使って校正を行う。

キャリブレーション後、Mコネを外して校正面でオープン状態が下の図。

こうなってしまうのは、キャリブレーションを行ったのが先端のSMAコネクタの部分だから(校正面がSMA-Jの位置)。SMA-J – M-Pコネクタの分だけずれている。そこで、スミスチャートが然るべき位置に来るようにE-Delayを調整。-205psで概ねそれらしい位置に来た。

この状態でアンテナ代りのRLC共振回路を測定する。

測定結果。マーカはリアクタンス(赤グラフ)が最小のポイント(つまり、共振周波数)。ただし、スイープのたびに少しズレる(フラフラする)ので、大体このあたりということ。

ちなみに、E-Delayを設定しない状態がこれ。

どちらも146.250MHzで同じ。

共振の様子は本物のアンテナと同じだけど、非常にブロードなことが大きな違い。SWRで言えば、1.5以下の範囲が100MHz位もある。

M410R + MC100

では、同軸ケーブル(M410R)をつなぐ。変換コネクタはMC100を使用する(同軸ケーブルの両端とも)。先程と同じようにキャリブレーションを行って測定する。

キャリブレーション後のオープン状態。

E-delay(-205ps)を設定後。

では、RLC共振回路を測定する。

グラグはきれいに見える。が、共振周波数は145.750MHzで、同軸ケーブルなしの状態から0.5MHzほど下にずれた。とはいえ、ケーブルを少し動かしたりしてもずれるので、判断が難しいところ。それに、コネクタを締めるのにトルクレンチを使ったわけではなく、単に手で締めただけなので、そうしたことが測定に与える影響もあるだろう。

M410R + 素性不明変換コネクタ

同軸ケーブルの両端の変換コネクタを素性不明のものに変えて同じように測定する。

キャリブレーション後のオープン。

E-Delayは-230psで大体の位置に来た。

RLC共振回路。共振点は144.000MHz。下に大きく(2.25MHz)ずれた。

NanoVNAの出口でキャリブレート

参考のために、NanoVNA-H4の出口でキャリブレーションを行い、同軸ケーブルを通して測定してみた。変換コネクタはM100を使用。グラフが波打っていて何を見ているかわからない。同軸の先端でキャリブレーションしないとダメなことがよく分かる。

430MHz

続いて430MHzで同様に測定。

基準(同軸ケーブルなし)

キャリブレーション後に校正面をオープンにした状態。

E-Delayを設定(-205ps)。

RLC共振回路を測定。共振点は430.750MHz。

E-Delayなしでも測ってみる。こちらは共振点が432.50MHz。

150MHzではこの程度のE-Delay(-205ps)は影響がなかったが、430MHzくらいになると影響が出てくるようだ。

M410R + MC100

続いて、同軸ケーブルとMC100を使ってキャリブレートしたもの。

キャリブレーション後、校正面でオープン状態。

E-Delayを設定(-205ps)。

RLC共振回路。グラフは少し波打った。共振点は429.000MHzで、3.5MHzほど下にずれた。しかし、そもそも波打っているので、ここが本当のポイントかは断定できない。

M410R + 素性不明変換コネクタ

同軸ケーブルと素性不明の変換コネクタを使ってキャリブレートしたもの。

キャリブレーション後、校正面でオープン状態。

E-Delayを設定(-230ps)。

RLC共振回路。グラフは少し波打った。共振点は413.000MHzで、19.5MHzも下にずれた。しかし、こちらも波打っているので、ここが本当のポイントかは断定できない。いずれにせよ、MC100の場合よりも特性が悪いことはわかる。

NanoVNAの出口でキャリブレート

こちらもNanoVNA-H4の出口でキャリブレーションを行って同軸ケーブルの先でRLC共振回路を見てみた。これだと何を見ているのだかさっぱりわからない。

ついでに、同軸ケーブルの先にダミーロード(NanoVNA付属のキャリブレーションキットのもの)をつないて見たのがこれ。

ダミーロードがこのように見えるのに、これにアンテナをつないで測定しても何を測っているかわからなくなるのは当然だろう。

まとめ

MC100と素性不明のものを比較のため再掲。

まず、150MHz。基準、MC100、素性不明の順。

150MHz程度では素性不明の変換コネクタを使った場合は同調点がやや下にずれる。実際のアンテナと違って特性がブロードなため判断が難しいが、大きく違うとまでは言えないかもしれない。

続いて、430MHz。

430MHzくらいになるとかなり違ってくる。MC100でも多少波打ってしまっているが、SWRのカーブで見れば大体の傾向は基準のものと同じ。一方、素性不明の変換コネクタを使った場合はSWRのカーブもだいぶ違ってしまっている。430MHzくらいともなれば、インピーダンスがいい加減なMコネを使ってはいけないことがよく分かる。ましてや、1200MHzともなれば…。

メーカの公式ページを再掲しておく。

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