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AIは1アマの問題を解けるか?

医師国家試験に合格水準とか米国大学院レベルの試験に合格とか何かと話題のAI。では、第一級アマチュア無線技士の問題を解くことはできるか?2023年(令和5年)4月期の問題をBing AI(GTP-4ベースのMicrosoftカスタマイズ版)とGoogle Bardに解かせてみる。問題は日本無線協会のサイトで公開されているものを拝借した。

アマチュア無線の国家試験の問題(無線工学)では図を使ったものが多いが、図は入力できない。また、「以下のうち正しいもの/間違っているものはどれか」といった設問も入れにくい。そのため、入力しやすいものを数問選んでやってみる。

しっかりした回答を出してくれるなら、受験したい者にとって参考になるだろうと思うのだが…。

無線工学

A-2(一応、正解)

赤丸が正解。

まず、Bing AI。

続いて、Google Bard。

この問題はBing AIもGoogle Bardも当然のように正解。と言いたいところだけど、Bardの回答の中のこれはウソでしょ。

レンツさんが発見したからレンツの法則。

なお、それぞれの回答の中の発見年の正否は未確認。

A-10(不正解)

どちらも同じ間違いをしている。

ただ、Bing AIにもう一度聞いてみたら、今度は正しい答えを出した。

Google Bardにも再度聞いてみたが、同じ間違い。

A-12(不正解)

どちらも不正解。

2波3次の相互変調の周波数は次の式で求められる。

\(2 f_1 – f_2
\\\\
2 f_2 – f_1\)

設問の周波数で計算すると次のようになる。

\(2 \times 438.98-439.54=438.42
\\\\
2 \times 439.54-438.98=440.10\)

問いは「低い方の周波数」なので、438.42MHzが答え。

A-19(Bing AIは正解、Google Bardは不正解)

Bing AIが正解(Google Bardは不正解)。

A-21(不正解)

どちらも不正解。

ちょっと気になったのが、Bardの「他の回答を表示」。クリックしてみたらこれが表示された。

「別案」を持っているようだけど、どれも不正解。

この問でいやらしいのは、アンテナ利得の4dB。過去の問題では3dBとか10dBとかのわかりやすい値だったと思う。これを真数に変換計算するにはlog102≒0.3を使うことになるのだろう。が、ここでは別の手で。4dB=10dB-6dBと表すことができ、10dBは10倍、6dBは4倍。dBでの引算は真数では割算になるので、4dBは10÷4=2.5倍。

なお、dBと真数を簡単に表したのがこちらの記事。

また、E0は次の式(これを覚えておかなければこの問題は解けない)。

\(E_0 = \frac{7\sqrt{GP}}{d} [V/m]
\\\\
G: アンテナ利得(真数)
\\\\
P: 送信電力 [W]
\\\\
d: 距離 [m]\)

\(E_0 = \frac{7\sqrt{2.5\times 40}}{20\times 10^{3}}
\\\\
=\frac{70}{20\times 10^{3}} = 3.5\times10^{-3}
\)

150MHzのλは2[m]。

あとは、問題で与えられている式を用いて計算する。

\(E=E_0\frac{4\pi h_1 h_2}{\lambda d}
\\\\
=3.5\times10^{-3} \times \frac{4\times 3.14 \times 20 \times 10}{2 \times 20\times 10^{3}}
\\\
=3.5\times 10^{-3} \times(2 \times 3.14 \times 10)\times 10^{-3}
\\\\
=219.8\times 10^{-6}
\)

ということで、約220[μV/m]。

法規

A-2(不正解)

どちらも不正解。

電波法 第十一条

(免許の拒否)
第十一条 第八条第一項第一号の期限(同条第二項の規定による期限の延長があつたときは、その期限)経過後二週間以内に前条の規定による届出がないときは、総務大臣は、その無線局の免許を拒否しなければならない。

A-12(正解)

どちらも正解。

(呼出しの中止)
第二十二条 無線局は、自局の呼出しが他の既に行われている通信に混信を与える旨の通知を受けたときは、直ちにその呼出しを中止しなければならない。無線設備の機器の試験又は調整のための電波の発射についても同様とする。

A-15(不正解)

※4は緑なのは元々。

どちらも不正解。Bing AIのQSAは信号の強さ(提示されたモールスコードはデタラメ)。Bardは回答自体がデタラメ。

明瞭度を表すQ符号はQRK。

A-21(正解?)

Bing AIは定義の頭が抜けており、微妙。定義はGoogle Bardの回答の通り。

A-22(不正解)

ここまでは選択肢を選ばせるものではなく正答を述べさせるように出題の形式を変えて入力した。この問題では、そのまま入力して選択肢から選ばせてみる。

回答が割れたが、どちらも不正解。

無線運用規則第15条と第22条は、それぞれこれこれ。不要な方向からの受信を避けるために指向性アンテナを使えというような記載はあるが、不要な輻射についての言及はないようなので2が正解ということか?難しい。

まとめ

今の段階では、Bing AIもGoogle Bardも1アマの試験にほとんど正解を出せない。試験勉強の参考にするのは危険なレベル。

それにしても、数年ぶりに1アマの試験問題を見たのだけど、出題内容が随分バラエティに富んでいる。真空管回路、コモンモードフィルタ、SDR、ネットワークアナライザ(Sパラメータ)など、新旧含めていろんなことに興味を持って接していないと難しい。丸暗記でどうにかなるようなものではない。参考書を買うならできるだけ新しいものを。参考までに、下の二冊は2023年発行(改定)のもの。

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