スプリアス関係を調べていたら、令和2年9月期(つまり、現時点で直近の実施された試験)の無線工学の問題に出題されているのを見つけた。以下、日本無線協会のサイトから拝借してきたもの。
最近は、こういう問題も出されるのかぁ。しかし、これは無線工学の範疇なの?法規じゃないのか?
それはそれとして、これに関連する資料を拾い出しておく。
まず、「領域」などの定義。これは、総務省の「無線設備の「スプリアス発射強度の許容値」の見直し」という資料(PDF)にまとまっている。この資料が総務省のどこから辿れるか見つけられなかったので直リンク⇒ https://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/others/spurious/file…
この中の「2ー1 スプリアス領域と帯域外領域の境界」と「4 スプリアス強度の測定方法」がわかりやすい。引用。
これで、設問の(1)と(2)は分かる。
- ア: 6 – 帯域外領域
- イ: 7 – スプリアス領域
- ウ: 9 – 変調
変調の状態についてはなかなか資料が見つからず、なんとか見つけたのが総務省の「スプリアス領域における不要発射等の測定方法例」というPDF⇒ https://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/others/spurious/file…
この中の「5 航空海上無線設備」から抜粋(アマチュア局に関するものは見つけられなかった)。
【追記】
「別表第三十五 証明規則第2条第1項第12号に掲げる無線設備の試験方法」にこの記載があった。
【追記ここまで】
ここから、設問(3)と(4)の答えはこう。
- エ: 5 – 80
- オ: 3 – 25ボー
ただし、この資料は「例」であって、法規で定められたものではないみたい。だから、「法規」では出題できないのかな?
念のため、日本無線協会の回答も引用しておく。
【補足】
設問(2)のを穴埋めするとこうなる(下線部が設問の「穴」)。
「スプリアス領域における不要発射の強度」の測定は変調状態において、~
これを読み替えると、変調状態で測定するのはスプリアス領域であって帯域外領域ではないということ。これについては、総務省の特性試験の試験方法のページから辿れる資料にある。
これの「1 スプリアス発射又は不要発射の強度」の「別表第1」がそれ。この中の「一 スプリアス領域における不要発射の強度の測定方法」の「1 一般事項」から引用。
⑶ 無線設備を通常の変調状態で動作させたときに~
一方、「二 帯域外領域におけるスプリアス発射の強度の測定方法」ではこう記載されている。
⑶ 無線設備を無変調状態で動作させたときの~
帯域外領域では「無変調」で測定すると記載されている。これを受けて、QEXの補足資料では以下のようにある。
帯域外領域(近傍)は無変調の搬送波を送信して確認します.(SSB では無変調では搬送波が出ないので測定はしない)
スプリアス測定に関して解説記事のあるQEXはこちら(特集は「実践 アマチュア無線機を測る」)。
コメント
CWの帯域外領域の測定は、連続送信(キャリアのみ)で測定します。
そんなの意味ある?と思いがちですが、水晶振動子の基本波やオーバートーンですと
普通は綺麗な1本線のスペアナ画像が出ます(寄生振動、電源ハムは論外です)が、シンセサイザ発振の場合は、ふらつきが出ることがあります。
なので、このような規定が出来たはずです。
つぎに、A1A(CW)の場合の帯域外領域(ニアリーイコール占有周波数帯幅)の測定ですが、
リグにエレキー機能が内蔵されていない場合は25ボーでも、内蔵の場合はその最高速度で測定する旨、ある認証機関から聞きました。 アイコムIC-7610は最大48WPMなので、かなり厳しい条件を満足していると思います。
(ボーとWPMの換算はわかりません)
情報、ありがとうございます。
ボーとWPMの換算ですが、まず、CWは単純なON/OFFだけですので、1 baud = 1 bpsですよね。したがって、この場合の25ボーは25 bpsであり、1ビットの時間は1/25=0.04 sです。また、デューティが50%ということだとすべて短点相当と考えられます。したがって、1分間なら60/0.04=1500短点です(短点の数ではなく、短点相当という意味です。空白も1短点分の長さの時間です)。ここで、1ワードを「PARIS」だとすると、50短点に相当しますので、1500/50=30 WPMとなります。
整理すると、60∗[ボーレート]/50=60∗25/50=30 WPMです。
逆に、48 WPMなら48*50/60=40ボーです。
これで合っていると思います。間違っていそうでしたら教えてください。
関連記事⇒ https://www.jh4vaj.com/archives/10328
こんにちは
勉強になることが多く、こちらのHPを時折のぞいています。
ボーレート換算は詳しくないので、お返事を控えます。
何かモノを作って規格通りですと胸を張るには色々と調べる必要があり、
大変だと言う事が良く分かりました。
各種スプリス測定は20-30年前のスペアナでは対応できない項目があると思います。
アマチュアの場合はJARL/JARDに測定を依頼すればよいのですが、
箸にも棒にも引っ掛からないモノを測ってもらっても仕方ないので、
古いスペアナで事前に簡易測定すれば大恥をかくことも無いですね。
1アマの国試には、稀に陸上無線技術士の試験と類似のものが出題されます。
その意味で、1アマ試験はレベルが高くなりました。
11月期の2級陸上無線技術士の基礎問題を見ていましたら、ダイオードの記号が
新旧混じっていて、あれっと思いました。
すみません。ボーレートの計算は間違っている気がしてきました。
私の上の計算ではONもOFFも意味を持っているものとして計算しています。しかし、CWの場合、情報を成す最小単位は「1短点と1空白」がセットですよね。「短点の連続は、「ON、OFF、ON、OFF、…」と繰り返します。「ON、ON、ON、…」ではありません。
そうすると、「1短点と1空白」の合計時間が1/25秒、短点と空白はそれぞれその半分の1/50秒です。1分間あたりの短点の数は60/(1/50)=3000です。「PARIS」だと50短点なので、3000/50=60 WPMですね。
48 WPMだと20ボーというとになります。
上の記事で触れたQEXの記事を見てみました。「25Hz短点(60WPM)で送信すればよいでしょう」とあります。やはり、後の計算の方で合っているようです。
総体的に言って、不要発射の国試出題は適切ではありません。その理由は、総務省自体が明確で科学的な見識を持ってないからです。
なお、定義は施則第2条63の2号、63の3号、63の4号、63の5号などに規定されております。これが正規の定義です。
測定方法については、法令の規定は不明確です。総務省のpdf「スプリアス領域における不要発射等の測定法例(情報通信審議会答申 H16.11.29 (諮問第2007号関係))」が参照されていますが、その内容は審議会の正規の答申書にはありません。つまり答申書のコピーでも抜粋でもないのです。言わば一部の役人による贋作です。
法令化されている測定方法としては、「登録検査等事業者等規則第十七条及び別表第五号第三の三(2)の規定に基づく登録検査等事業者が行う検査の実施方法等及び無線設備の総合試験の具体的な確認の方法」(平成二十三年六月二十九日総務省告示第二百七十八号)がありますが、中身は具体的ではありません。
ありがとうございます。
「登録検査等事業者等規則第十七条及び別表第五号第三の三(2)の規定に基づく登録検査等事業者が行う検査の実施方法等及び無線設備の総合試験の具体的な確認の方法」を参照しやすいよう、リンクを置いておくこととにします。
https://www.tele.soumu.go.jp/horei/reiki_honbun/a71ab21211.h…