
JR0DBKさん頒布の50MHz帯AM QRPトランシーバ(出力500mW)のレビューの機会を得た。
特徴・仕様
生成AI(Gemini)にまとめさせてみた(結構大変だった…)。
KTR-12の特徴
- 中・上級者向けセミキット:表面実装部品やマイコンチップなどが実装済みの基板をベースに、一部の部品を自身で調達・組み立てる50MHz帯AMトランシーバーキットです(2023年発表のKTR-10の後継機)。
- 高音質な送信音声:独自のNFB(負帰還)回路を用いた終段FETのゲート変調を採用しており、極めて変調歪みの小さい綺麗な電波を出力できます。
- 直感的な操作性:液晶ディスプレイ、ロータリーエンコーダ、各種ボタンを備え、市販のトランシーバーと同じ感覚で操作が可能です。
- 精密な周波数制御:Arduinoベースのマイコン(ATmega328)とPLL(Si5351A)による制御で、0.1kHz(100Hz)単位の正確な周波数チューニングが行えます。
- 実用的な受信性能と拡張性:専用ICを用いた構成により実用的な感度を確保。さらにミキサー基板を追加することでダブルスーパー化できるなど、拡張性も備えています。
KTR-12の主な仕様
【総合】
- 電源:12V / 300mA
- 制御MCU:ATmega328P または ATmega328PB
- PLLモジュール:Si5351A
【送信部】
- 送信周波数:50.003MHz 〜 53.997MHz(AM)
- 送信出力:500mW(12V時)
- 終段FET:AFT05MS004N(1個)
- 電波形式:AM(A3E)
- 変調方式:NFB付きゲート変調(終段ゲート変調)
【受信部】
- 受信周波数:50.000MHz 〜 54.000MHz(AM)
- 受信方式:シングルスーパーヘテロダイン
- 中間周波数(IF):455kHz
- 使用IC:NJM2552V
KTR-12の頒布について
本機はフルキットではなく、表面実装部品が実装済みの各種基板と一部の専用パーツをセットにした「セミキット」として頒布されています。一般的な電子部品は公開されている部品表をもとに各自で調達する必要があります。
- セミキット(基本セット):4,180円(送料・税込み)
- コントロール・PLL、パネル、受信、送信、ミキサーの各種基板と、コアや水晶などの専用パーツがセットになった基本パッケージです。すべての基板をご自身で組み立てます。
- 完成・調整済み送信基板セット:8,910円(送料・税込み)
- 基本セットの構成のうち、組み立てや調整のハードルとなる送信基板を、あらかじめ動作確認まで済ませた「完成・調整済み基板(TX-10)」に置き換えたセットです。ハンダ付けや高周波回路の調整に不安がある方でも確実な動作が期待できます。
組立て
ここからは人間。体験レポート。
今回手に入れたのは「完成・調整済み送信基板セット」。


送信部は完成品。調整済みなのでそのまま使える。
他の基板もチップ部品は実装済み。自分でハンダ付けするのはリード部品だけ。
この他、ダブルスーパー化用の部材(写真に入れ忘れた)。
部品実装
まず、手持ちの部品を実装。手持ちにない部品の洗い出しを兼ねて。

抵抗の多くは立てて実装するパターンになっており、ピッチは2.54mm。ならば、2012Mサイズのチップ抵抗が載せられるので、そうした。リード部品よりもチップ部品のほうが圧倒的に楽なので(基板の表だけで作業できていちいち裏返す必要がない、足を切る必要がない)。ダイオード1N4148も少々無理やりながら、チップ部品を実装。
コンデンサは5.08mmピッチのパターンなのでそうは行かず、素直にリード部品を並べた(やっぱり面倒だった…)。
その後、不足部品を入手して組み立て。
T1に使う線材は「0.3mm前後のポリウレタン線」となっていたが、手持ちにあったのは0.4mm。所定の回数巻くことはできたけれど、タップ部は線が二本になるため太すぎて穴に入らない。仕方ないのでC5に直付けした。C5は部品表では10pFとなっていたけれど、「8pFにした方が感度が少し上がると思います」とあったので、手持ちの8.2pFのチップコンデンサを無理やり載せた。そこにT1のタップを直付け。

全体結線
こちらの二つの図面を参考にした。
https://yuki-lab.jp/hw/ktr-12/tx/KTR-12-TX-WIRE.pdf
https://yuki-lab.jp/hw/ktr-10/rx/KTR-10-RX-WIRE.pdf

ところが動かない。コントローラ部は動いているようで液晶はちゃんと表示されるし、ロータリエンコーダやスイッチに反応してくれる。
しかし、音がまったく出ない。ノイズすら聞こえない(時折、マイコン由来と思われるデジタル系っぽいノイズが聞こえる)。
トラブルシューティング(音が出ない)
まず最初に疑ったのはオーディオアンプ。でも、前述のとおり、時折マイコン由来のようなノイズは聞こえるし、アンプの入力端子をオシロのプローブで触るとノイズが聞こえるので、アンプは生きていそう。
PLLからの信号も、受信基板でオシロで見ると50MHzくらいのものが来ているのでおそらく問題なさそう。
となると、あとは、部品の付け間違いか、ハンダ不良。じっくり探して、見つけた。


NJM2552Vの、逆から数えて二番目、pin 19が浮いている。何かと思って調べたら、電源ピン。そりゃ動かないわなと思い、上から押さえつけてみたらノイズが聞こえた。ということで、ここを付け直して修正完了。本機のシグナルジェネレータ機能で50.2MHzを出すと無変調が受かるし、tinySAのSG機能で50.2MHzに1kHz AMを出すとトーンが聞こえるので問題ないだろう。
この件については、JR0DBKさんに連絡したところ「そういうこともありうるので、ぜひ記事にして」とのことだったのでそのまま記しておく。
なお、パターンがめくれているかのように見えるのは、ハンダくずか何かのゴミ。修正・清掃後はなくなった。

それともう一点。マイクコネクタがこの向きだとGNDがCLK1に接触しやすい(接触すると音が出なくなる)。しっかり絶縁するとか、コネクタの向きを変えるなどして、接触しないように。

なお、これは仮付け状態。まだケースに入れていないので、外すことがあるだろうから(このジャックは配線を取り外さないとパネルから抜けない)。
送信確認
送信確認もちょっと悩んだ。マイクのPTTを押しても送信状態にならない。
マニュアルを良く読むとこうあった。
初期設定では PTT動作(送信ON)は無効になっています。液晶メニュー設定の「Set PTT Volt」で PTT動作時の A/D電圧を記憶させてください。
また、KTR-12の場合は「PLL Ch」と「Ch2 Current」の変更も必要です。PLL Chは「ch 2」、Ch2 Currentは「4mA」に設定してください。
なるほど。設定が必要なようだ。
PTT関連は、「6 Set PTT Volt」でPTTをオンにしたときとオフにしたときの電圧を調べて、「7 PTT Volt High」と「8 PTT Volt Low」を適切に設定する。
PLL関連は、「12 TX PLL Ch」と「13 Ch2 Current」。
これで、別の無線機でモニタして音声が聞こえた。同様に、別の無線機とで受信音声も確認。
マイクはこれを使った。
追加基板
これはらはキットには含まれない。楽をするために自分で用意した。KTR-12本体の基板が1.0mm圧だったので、これらの基板も1.0mmで作った。
電源スイッチ・ボリューム基板

単純にコネクタで接続できるようにしただけ。XHコネクタを想定しているけれど、2.5mmピッチなので他の適当なコネクタやピンヘッダでもOK。
スピーカ/イヤフォン切替基板
外部配線図にこのような図が載っている。

CN7の1と2がBTLアンプの出力、3がGND。なるほど、面白い。スピーカのときはBTLで振幅を稼ぎ、ヘッドフォンの場合はシングルエンドで音量を落とすようになっている。
ただ、この接続ではヘッドフォンでは片側しか聞こえない。両側で聞こえるようにするにはヘッドフォンジャックの5と2を接続すれば良い。でも、これは実は問題がある。ステレオタイプのヘッドフォンなら良いけれど、モノラルタイプの2ピンのプラグを挿すと2と1がショートしてし、アンプの出力がGNDに落ちてしまって音が出ない。音が出ないだけならまだ良いのだけど、交流的にはアンプ出力がGNDにショートした状態になってしまう。壊れることはないかも知れないけれど気持ち悪い。
別途(私が)開発中のFDBM02で同じようなことをやっている。

こちらは、ヘッドフォンでもシングルエンドではなくてBTLを使う。ヘッドフォン時はR11が入るので音量が下がる。この接続でも(ジャンパJP1を挿した状態で)2ピンのプラグを挿すとヘッドフォンからは音は出ないが、R11が入っているのでアンプ出力がGNDに落ちてしまうことはない。
C12とR10はよくあるZobelネットワーク。容量負荷がつながった場合の発振防止だけれど、この装置ではスピーカは内蔵なので配線長が短い。ヘッドフォン時はたとえケーブルが長くて浮遊容量が大きくてもR11が入るのでこれでダンプされるはず。なので、C12とR10はなくても問題ない。一応、付けておいたという程度。

抵抗はチップ部品でもリード部品でも、どちらでも実装できるようにしてある。
ダブルスーパー化
キットにはダブルスーパーヘテロダイン方式に改造するパーツが入っている。基本のシングルスーパー方式での動作が確認できたので、ダブルスーパーに改造する。

- 受信基板のC10(1000pF)を取り外し、C7, C9, X1を取り付ける
- ダブルスーパー化基板(手前の小基板)を組み立てる
- ダブルスーパー化基板と受信基板を接続する
- PLLの接続先を受信基板からダブルスーパー化基板に変更する
- 電源を入れ、マニュアルに沿って設定メニューでIF周波数の変更等を行う
シグナルジェネレータ機能で50.2MHzを出して、受信できることを確認。
全体の様子。

ケースに入れるときには、スピーカはもうちょっとマシなものに変えるつもり。
まとめ
一番手がかかる送信基板が完成・調整済みなのはとても楽。自分で動作確認しようとすると、高速なオシロスコープやスペクトラムアナライザが必要。一方で、それらの測定・調整が必要ないのはトランシーバを作ったという感じはしないかも知れない。「完成・調整済み送信基板セット」と「セミキット(基本セット)」の二種類が用意されているので、好みで選べる。
現時点(2026年8月)で頒布中だし、ハムフェアでも頒布するようなので(ハムフェに行くなら)現物を見てみると良いかも。
【余談】
端子の圧着にはIWISSのSN-01BMを使っている。
以前はPA-09を使っていたのだけれど、これだとほとんど失敗していた。たまに成功するという程度で、あまりにも効率が悪い。上手な人が使えば問題ないのだろうけれど、私には無理だった。SN-01BMを使うようになってから成功確率が格段に上がった(失敗することもある)。
基板組立よりも、ケーブル作成のほうが大変…。


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