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LM358Nのクロスオーバ歪を見てみる

クロスオーバ歪を避けるための出力バイアス

TIのデータシートから引用。

For ac applications, where the load is capacitively coupled to the output of the amplifier, a resistor should be used, from the output of the amplifier to ground to increase the class A bias current and prevent crossover distortion. Where the load is directly coupled, as in dc applications, there is no crossover distortion.

Geminiによる和訳:
AC 動作で負荷がアンプ出力にコンデンサ結合されている場合、クラス A バイアス電流を増やしクロスオーバー歪みを防止するために、アンプ出力からグランドへの抵抗器が必要です。 DC 動作のように負荷が直接結合されている場合、クロスオーバー歪みは発生しません。

同じく、データシートから。この図ではRBとして6.2kが付いている。

また、JRC(現日清紡)のNJM2904(LM358N相当品(だと思う))のデータシートにはこうある。

この件について扱ったブログ記事には次のようなものがある。

これらの記事では、いずれも3.3kΩが使われている。

実験

回路は単電源と両電源の比較を行ったときのもののうち、両電源の方。

回路図を再掲(オペアンプは、もちろんLM358Nを使う)。負荷はヘッドフォンの代りに22Ωの抵抗をつなぐ。

早速、測定。

見事にクロスオーバ歪が生じている。

では、オペアンプの出力側にプルダウン抵抗をつける。接続先は、GNDREFではなく、GND(NJM2904のデータシートを参考に)。負荷抵抗が小さい(ヘッドフォンを想定している)ので、プルダウン抵抗は小さめの値に(1kΩ)にしてみた。

歪はきれいに消えた。

入力電圧を少し上げてみたところ、出力波形が崩れた。

もっと上げてみるとクロスオーバ歪みが発生するポイントが下ったことがよく分かる(-100mVくらい)。

小信号ならプルダウン抵抗でちゃんと対処できることがわかった。もっと小さな電圧なら、抵抗値はもっと大きくていいはず。

上記のNJM2904のデータシートによれば、負荷抵抗(この場合は保護抵抗の22Ωと疑似負荷の22Ω)と帰還抵抗(47kΩ)の並列値よりもプルダウン抵抗の値は小さくせよとのこと。計算すると、その値は44Ωくらい。それに対してこの回路では1kΩにしているので、このくらいの出力電圧でクロスオーバ歪が生じるのだろう。とはいえ、プルダウン抵抗の値を小さくすれば、当然、消費電流が増えるし、その発熱も気になる。

実際、この回路で音楽を聞いてみると、音量をが小さいうちはちゃんと聞こえるけれど、音量を上げるとひどく歪んでくる。プルダウン抵抗を入れない状態だと、小音量でもひどく歪んでいる。

というわけで、LM358Nでヘッドフォンを直接ドライブするような大電流を取り出すのは無理があるようだ(LN358Nを使わず、他のオペアンプを使えばいいだけの話)。

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