QMX(ローバンド版)のLPFの確認
まず、回路図。
マニュアルで値をチェック。
よーく見ると、C516とC525の値が入れ替わっている。C516は回路図では270pF、マニュアルでは180pF。C525はその逆で、回路図では180pFで、マニュアルでは270pF。他はCもLも一致している(見落としていなければ)。
LTspiceでシミュレーションを行ってみる。C516はC525はマニュアルの値で。
回路図に合わせて、C516とC525を逆にしたものと比較。
赤がマニュアル、緑が回路図値。ほとんど変らないように見えるが、緑(回路図)の方が通過帯域内の暴れが少なく、切れも急峻かな?ということで、おそらく、回路図のほうが正しいのだろう。マニュアルの方ですでに取り付けてしまった。付け直すか…。
【追記】C516とC525は、入れ替えるように変更したそうだ。
Low 20m output power on early QMX builds
There was an error on the schematic and in the build instructions; basically the C525 and C516 capacitors were swapped. The current assembly manual is correct: C525 is 270pF and C516 is 180pF.
https://qrp-labs.com/qmx/qmxtrouble.html
ということで、マニュアルに記載されている「C516が180pF、C525が270pF」が正しい。
※さらに追記あり → こちら
Lの測定
Lはトロイダルコアに巻いて作るが、経験上、計算値通りにはならない。ということで、NanoVNA-H4で実測する。
まず、測定値のまとめ。インダクタンスは30MHzでの値。
巻数 | インダクタンス | 巻数 | インダクタンス | 巻数 | インダクタンス | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
6 | 198 nH | 12 | 633 nH | 24 | 2.39 μH | ||
7 | 255 nH | 13 | 776 nH | 25 | 2.59 μH | ||
8 | 292 nH | 14 | 852 nH | 26 | 2.81 μH | ||
9 | 359 nH | 15 | 948 nH | 27 | 3.01 μH | ||
10 | 419 nH | 16 | 1.02 μH | 28 | 3.43 μH | ||
11 | 514 nH | 18 | 1.28 μH | 29 | 3.70 μH |
生データ
NanoVNA-H4のスクリーンショット。横線(ノイズ)は、どうやらmicroSDカードのせいのよう。このmicroSD、以前、LiteVNAで使って同じようなノイズが入っていた。NanoVNA-H4でもこのように同様のノイズが発生。他のmicroSDではのようなノイズは入らない(LiteVNAでも)。
- 6回、7回
- 8回、9回
- 10回、11回
- 12回、13回
- 14回、15回
- 16回、18回(17回ではない)
- 24回、25回
- 26回、27回
- 28回、29回
巻き方による影響
測定中に気づいたのだけど、巻き方によってインダクタンスがかなり変化する。
均等にバラすよりも片側に寄せたほうがインダクタンスが大きくなる。30MHzにおいて、633nHと755nH。割合にして20%くらい多くなる。無視するには大きすぎる。見方を変えると、微調整できるとも言えるが。
実測値を用いてシミュレーション
マニュアルの巻数では所定のインダクタンスとは多少異なるので、巻数は無視して、所定のインダクタンスに近い値で再度シミュレーションする。
まぁまぁかな。V(out2-2)はC516とC525が回路図の値の方。やっぱりこっちのほうが良さそう。
【追記】C516とC525は入れ替えたとのことだったが、ならば、Lの実測値を用いてシミュレーションで確認してみる。
L | C | |
---|---|---|
Out2 | マニュアルの値に近い実測値 | マニュアル |
Out2-2 | マニュアルの値に近い実測値 | 回路図(マニュアルの逆) |
Out2-3 | マニュアルの巻数での実測値 | マニュアル |
Out2-4 | マニュアルの巻数での実測値 | 回路図(マニュアルの逆) |
カットオフ周波数付近を拡大。
Out2-4が最初の設計で、これが落ち始めが最も早い。Cを逆にしたものがOut2-3で、これがマニュアルで指示されているもの。落ち始めの周波数が多少上に上がった。落ち始めが想定よりも低いのは、所定の巻数では想定よりもLの値が大きかったためと考えられそう。
巻数を減らしてインダクタンスを設計値に近づけたものがOut2-2(Cは回路図の通り)。落ち始めが最も遅い(周波数が高い)が、その後の下がり方は急峻。
Out2は設計値に近いLでCを逆転させたもの(マニュアルの順)。落ち始めがやや早まる。
こうやって比べてみると、Out2-2の本来の設計値に近いLと元々のCの順のものが最も良さそうに見える(L510の巻数をマニュアルよりも減らし、Cの順は回路図通り)。話の発端が「20mでの出力が弱く、C516とC525の順を逆にしたら改善した」ということのようで、CをいじるよりもLをいじったほうが良かったということなのではないだろうか?とはいえ、あくまでシミュレーションに基づく推測であり、実際のところはやってみなければわからないが。
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