JLCPCB KiCadプラグインで簡単基板発注

JLCPCBのKiCadプラグインがあるので試してみたら、基板の発注がものすごく簡単だった(部品実装も含めて)。以下、手順をまとめておく。

大まかな流れ

基板発注の流れをざっくりまとめるとこう。

  1. 設計
    1. KiCadで回路図・基板を設計する
    2. ガーバファイルを出力し、ZIPにまとめる
    3. BOMを出力する(部品実装を行う場合)
    4. CPLファイル(部品配置リスト)を出力し、一部手動で手直しする(部品実装を行う場合)
  2. 基板発注
    1. ガーバファイルをアップロードし、基板を発注する
    2. BOM、CPLファイルをアップロードし、部品実装を発注する(部品実装を行う場合)

詳しい話は、以前こちらの記事にまとめた。

JLCPCBのKiCadプラグインを使うと、上の手順のガーバファイル、BOM、CPLファイルの出力がクリック一発でできてしまう。もちろん、ガーバファイルをZIPにまとめる手間も不要だし、CPLファイルの手動修正も不要。部品実装の準備がものすごく楽になるが、実装行わない場合でもガーバファイルの出力が簡単になるので、このプラグインを使わない手はない。

また、以前まとめた手順では、回路図を描く段階で部品を決定し、その部品のLCSCコードをプロパティに設定すると説明した。実は、このLCSCコードの指定は必ずしも行わなくて良いことがわかった。これについても以下の手順説明の中で触れる。

プラグインのインストール

まずは、プラグインをインストールする。と言っても、KiCadの中から簡単に行える。

KiCadのウィンドウの中から、「ツール」→「プラグインとコンテンツマネージャ」を選択する。

検索窓に「jlc」と入力すれば簡単に見つかる。「インストール」をクリック。これだけではインストールされない(ちょっとした落とし穴)。このあと、画面下の「変更を適用」をクリックすると実際にインストールされる。

すぐに終るはず。「閉じる」を押して完了。これだけ。

製造ファイル出力

まずは、通常通り回路図を描く。

注意点としては、定数(Value)Footprintを決めること。LCSCフィールドは作成・入力する必要はない(細かく言えば、した方が良いがしなくても良い、という意味)。Footprintは「フットプリント割り当てツール」で一括して指定してもよい。このあたりは普段どおり。

回路図ができたら基板を設計する(必要に応じて回路図修正と基板設計を行き来しつつ)。

基板設計が終ったら、JLCPCBのプラグインのアイコンをクリック。これは基板エディタの右上にある(下の図の赤矢印)。

たったこれだけでガーバファイル、BOM、CPLファイルが生成される。生成される場所はそのプロジェクトの「production」フォルダ。フォルダ名は決め打ち(変更できないみたい)。また、クリックするたびにフィアルは上書きされる(警告なし)。

上の図のように、五つのファイルが作られる。bom.csvがBOM、positions.csvがCPLファイル、gerber.zipがガーバファイル(群)。designators.csvとnetlist.ipcは基板発注には不要。gerber.zipには、*.csvなども全部含まれている。

従来の手順なら、ガーバファイルの出力画面を開いて、各種パラメータなどを確認して出力。さらにドリルファイルなども出力。それからBOMを出力し、CPLファイルを書き出したらヘッダを修正。となるのだけど、それらがこのアイコンを一回クリックするだけでできてしまう。画期的に楽。

発注

JLCPCBのオンライン見積りのページを開いて発注する。

基板

Add gerber fileをクリックして、先程のgerber.zipをアップロードする。このZIPにはガーバファイル以外も含まれるが問題ない(必要なものだけが使われる)。

基板の厚さやレジストの色など、希望に合わせて設定する(これもいつも通り)。基板発注だけなら以上。あとはカートに入れるだけ。部品実装も行うなら以下の手順にそって進める。

部品実装

PCB Assemblyのスイッチをオン。

ファイルアップロード

実装面や枚数の指定を行う(これも普段どおり)。Confirmボタンを押して先に進める。

Add BOM Fileではbom.csvを、Add CPL Fileではpositions.csvを指定する。

NEXTで先へ。

実装部品チェック

読み込ませたファイルから実装部品が割り出される。ここはしっかりチェックが必要。

実装部品は、部品番号(CとかRとか)、定数、フットプリント(サイズ情報)から判断しているみたい。部品選定で最優先されるのはBasicパーツのリストにあるもののよう。

詳細確認

部品名をクリックすれば詳細が表示されるので内容を確認する(データシートへのリンクもあるので必要に応じてチェック)。

実装しない部品の指定(実装指定解除)

Basicパーツだけではなく、Extendedパーツでも実装候補に上がる。U1(TDA2822)がその例。

これはExtendedであるだけでなく、DIP品なので手ハンダになるため実装費が高い。そもそもこれをDIP品にしたのはソケットを使いたかったから。なので、これは実装しない。Selectのチェックを外す。

実装部品追加

実装するつもりなのに実装候補に挙がっていない部品は、ここで手動で指定する。

D2(LED)は実装するつもりなのだけど、情報不足なのか自動判断できなかったみたい。Searchをクリック。

サイズ(Package)に様々なものが挙がっているところを見ると、どうやらサイズも判断できていないらしい。そこで、検索ワードにサイズ情報の「0805」を追加して検索。さらに「Basic Parts Only」にチェック。

候補部品が一つに絞られた。クリックして詳細確認。

これで良いので「Select」をクリック。

実装候補にD2が加わった(U1は先程外したのでそのまま)。

実装部品がすべて決まったら「NEXT」ボタンをクリック。

実装状態確認

しばらく待つと部品を実装したイメージが表示される。

拡大したりして状況を確認。

OKなら「Save To Cart」をクリック。もし、部品の向きが間違っているなどあれば、発注時にコメントを入れておくと対応してくれる(コメントを入れていなくてもエンジニアがチェックして問合せが来たりする)。

このときに、もし、基板と部品の表示がずれていた場合は、こちらの記事を参考に。

決済

支払いは通常通り。

実装状態確認までは5枚実装で進めていたけど、ここで2枚実装に変更したので実装費が$9.70になっている。

実装用のクーポン(SMT Special Offer)$9.00が使えるので、かなり安くなる。部品実装すると格安の配送が使えないのがちょっと残念ではあるが。

仕上り

発注後は数日で製造が終り、その後、一週間程度で受け取り。下が今回実際に製造した基板。

まとめなど

今回作ったのはシンプルな基板ではあるけど、こうやってチップ部品だけでも実装してもらうとものすごく楽。プラグインを入れておけば、製造に必要なファイルが一発でできあがる(従来の手順では必要だった手動修正も、この方法なら不要)。

以前はいちいち部品のLCSCコードを調べて入力しなきゃいけないので結構大変だと思っていたのだけど、実際はほとんど自動判定で適切な部品を選んでもらえことがわかった。これは非常に楽。ただし、逆に言えば、実装するつもりのないものまで実装候補にされるおそれがあるので、その点は要注意。

実は、当初、LCSCコードを入力していない部品まで実装対象になっていて変だと思ったところから、今回の部品自動判定の話につながった。これについて問い合わせたところ、LCSCコードは参考情報というような扱いで、入力してあればそれが使われるし、していなければ自動判定で実装可能な部品が割り当てられるらしい。

抵抗やコンデンサなど、回路図上でコピペして使い、あとで定数を変更するとLCSCコードと一致しなくなる。逆に、今回のようにLCSCを入れていなければコードと定数の不一致のトラブル(間違った定数の実装)は避けられる。

試作でも自分で手ハンダする手間を考えれは実装サービスを使ったほうが効率的だと思う。


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