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Gawantもどきの作成

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Gawantとは?

Gawant1型という知る人ぞ知る面白いアンテナがある。これは、jf1qhzさんが開発されたアンテナで、FT-817に直結させるHF用ロッドアンテナ。トロイダルコアを使ったコイルとポリバリコンで構成されたシンプルなマッチング回路を持ち、ノンラジアルで使えるのが特長。ポリバリコンは一個なので、チューニング作業が楽なのもお手軽で嬉しい。主に、twitterで情報が公開されている。鍵付きアカウント(しながわAA46/JF1QHZ‏)のため、フォロー認証されていないと見えないが。

https://twitter.com/JF1QHZ/status/812667669052723201

https://twitter.com/JF1QHZ/status/807839113093054464

FT-817だと後ろにも付けられるらしい。ユーザのお一人、jg1xraさんのブログに写真がある。

http://jg1xra.com/img_5364/

ちなみに、「Gawant(ガワント)」という名前はjg1xraさんが命名したらしい。別名、「しながわアンテナ」。

構造

内部構造は、上のtwitter記事を見ると、LCの共振回路にロッドアンテナをつないだもの。構成自体はEFHW(端点給電半波長)アンテナとして知られているものと同じ。EFHWはその名の通りλ/2のエレメントだけれど、Gawant1は(波長に比べて)極端に短いロッドアンテナ(1.5m)を使うのが特徴。比較的シンプルなので、自作も難しくないだろう。

逆に、波長に比べて長いものを使うものとして、グローバルアンテナ研究会のステルスロングワイヤーがある。こちらは、20~100m以上と言っている。

超安価 3.5~29MHz ステルスロングワイヤー
http://ja1ywi.web.fc2.com/ja1ywi-1/antenna-24.htm

HF帶手動式超簡単アンテナカップラー
http://ja1ywi.web.fc2.com/ja1ywi-1/antenna-23.htm

EFHWを含めて、これらは、LC共振回路を用いて電圧給電するのが特長。総合して考えるに、効率(電波の飛びの良さ)を置いておけば、エレメントは任意長で良さそう。

FEHWの記事もいくつか挙げておく。

The End Fed Half Wave Antenna
http://www.aa5tb.com/efha.html

Portable Half Wave Wire Antenna
http://www.w0ch.com/field_antenna/field_antenna.htm

“EFHW” – the end-fed half wave antenna
http://pages.suddenlink.net/wa5bdu/efhw.htm

EFHW給電部の製作方法 その1 コイル
http://ubl-tanaka.way-nifty.com/top/2010/04/efhw-0487.html

EFHW 1/2λ電圧給電
http://ubl-tanaka.way-nifty.com/top/EFHW.html

JA7QIL の手作り QRP EFHW アンテナチューナ
http://a1club.net/file2/data/QRP_ATU_Brochure_4_Hamfair13_00…

ロッドアンテナの入手

Gawant1型では、1.5mのロッドアンテナを使う。しかし、これが入手難。昔なら長いものも結構あったらしいけど、最近は需要がないようでせいぜい1m位のものしか簡単には見つからない。

ようやく見つけたのが、CB無線用のもの。機械的な長さは1.49mだけれど、途中に短縮コイルが入っていて、27~30MHz用という仕様になっている。

CB用ロッドアンテナ
通販サイトで見つけたCB用ロッドアンテナを入手。全長149cmでBNCコネクタ。センタローディングコイルを内蔵しているようで、27-30MHz対応という触れ込み。 とりあえず、室内でSARK100でアナライズ。 手始めに、29MHz付近をス...

LCの検討

まず、使用周波数は、7~21MHzとする。これは、HB-1B MK3で使用することを想定したもの。

ジャンク箱を漁ったらポリバリコンが出てきたので、これを使う。容量を測定したところ、15~155pFと25~80pF程度だった。

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コイルは、トロイダルコアT68-2を使うこととし、こちらのサイトでシミュレートすると13回巻きで0.96µHとなった。

T68-2
T68-2

15~150pFと組み合せると、共振周波数は41.9~13.2MHz。

また、巻数を27回とすると4.16µHで、15~150pFとの共振周波数は20.1~6.4MHz。

ということで、27回巻き、13回でタップを出して切り替え式にすれば、目的の周波数範囲をカバーできそう。

なお、共振数端数の計算はこちらのサイトを使わせてもらった。

LC共振の周波数
http://keisan.casio.jp/exec/user/1320287966

予備実験

では、実際にコイルを巻いて共振数端数を測定してみる。

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6.6~29.2MHz、11.2~43.4MHzと、まぁ、だいたい計算通り。これがそのまま使えるなら、巻数が多い方だけで所望の周波数帯をカバーできることになるが、果たして、そんなに上手くいくか?

回路検討

せっかくなので、SWR検出ブリッジも入れる。オリジナルのGawantには入っていないけど、そこは自作ならではの追加ということで。

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検出部のコアにはTR-10-5-5EDを使う。特別な理由があるわけではなく、たまたま手持ち品があったため(秋月電子で30円のもの)。

ブリッジが平衡すると中点同士の電位が同じになってLEDが点灯しなくなる。つまり、LEDが暗くなるポイントを探すことでアンテナの調整を行う。

ところで、SWR検出部のブリッジ部の抵抗は何Wを用いるべきか?

ブリッジが平衡した状態であれば、両側に同じだけ電流が流れるので各抵抗は1/4ずつの電力を消費する。入力電力が5Wであれば1.25W。

アンテナ部が開放(インピーダンス無限大)だとブリッジの片方にしか電流が流れないので、1/2ずつということになり、2.5W。

アンテナ部がショートするとブリッジの片方が約100Ωもう片方が50Ωになるので、50Ω側に全体の2/3の電流が流れる。このため、こちら側の電力が3.33W。

ということで、3Wの酸化金属抵抗を使った。しかし、これは最も極端な場合なので、現実にはこんなにはかからないだろう。実際、測定中に熱くなるようなことはなかった。測定時に短時間だけ使うのなら2Wでも充分なのかもしれない。

動作テスト

バラック状態でのテスト。HB-1B、SWR計とつないで測定。

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動作の確認はできた。

しかし、周波数範囲は随分と下がる感じ。結局、23回巻き、10回タップが良さそうな感じ。これだと、7~14MHz、14MHz~21MHzをカバーできる(14MHzはどちらでもOKということ)。

また、LEDが明るすぎたので、抵抗を10kΩに変更。これでも明るすぎるので、検出トランスの巻数比を落とした方がいいかもしれないが、屋外で使うことを考えると、ある程度の明るさがないと見ないかな。

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組立て

タカチのSW-65Sというケースに組み込んだ。

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実験しながらとは言え、相変らずユニバーサル基板の使い方が下手で汚い…

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一見、いい感じだけれど、BNCコネクタ(オス)って自由に回転するので、アンテナがちょっと揺れると回ってコケる…。詰めが甘い。

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ロッドアンテナの代りに、こんな変換コネクタを付ければ、ワイヤでもOK。これならコケない。

調整

このアンテナの調整は、基本的にはバリコンを回すだけ(この実装ではバンドによってコイルの切り替えがあるが)。

最初に、スイッチを素通し側(SWRインジケータ側ではない方)にセットし、受信状態で受信音(ノイズ)が最大になるところを探す。続いて、スイッチをSWRインジケータ側に切り替えてLEDが最も暗くなるように微調整する。以上、おしまい。もちろん、外部のSWR計やリグ内蔵のSWR計を使ってもよい。

受信音の最大ポイントと、送信時にマッチングが取れるポイントは必ずしも一致しない。と言うか、多少ずれる。とはいえ目安にはなるので、受信状態でアタリを付けておけば無駄な送信を避けられる。

調整が終ったらスイッチを素通し側に切り替えておく。

なお、スイッチを素通し側にした状態も、つまり、通常の使用状態でも、SWRインジケータLEDが点灯する。狭い中に詰め込んでいるので誘導しているんだろう。これは仕方ない。

大問題(感電)

送信中にコネクタに触れたら熱い感じがした。熱いというよりも痛い。送信を止めて触れると熱くないので、これは熱ではなく、感電しているっぽい。試しに、検電ドライバで触れてみたら元気に光る。GND側に回り込んでいるのだろうか?

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バンドごとの変化を見ると、7MHzが一番痛い^^; 10MHzも痛い。14MHzだとちょっと感じる。14MHzでもコイルの巻数が少ない方だとあまり感じない。18、21MHzでは特に感じない。

電圧を計算してみよう。

FEHWの場合、インピーダンスは3kΩとか5kΩと言われているようだ。

\(P=E^2/R\)なので、\(E=\sqrt{PR}\)。Pが5Wだとすると、インピーダンスが3kΩの場合で\(\sqrt{5\times 3\times 10^3}=122 [V]\)、5kΩなら\(\sqrt{5\times 3\times 10^3}=158 [V]\)。このアンテナのインピーダンスはわからないけど、この計算に近い値なら痛いはずだし、検電ドライバも光るわけだ。

しかし、オリジナルの作者さんによれば、検電ドライバは光ったりしないそうだ。やっぱり、どこかに問題があるんだろう。

GawantもどきをSARK100で見てみる
作成したGawantもどきをアンテナアナライザのSARK100で見てみる。 7MHz(一番上)は、まぁ、それなりにいい感じ。だけど、それ以外はSWRが落ちていない。 でも、HB-1B MK3に内蔵のSWRメータだとちゃんと落ちてる。正しくは...

コメント

  1. JA1TEQ より:

    実験結果や貴重な出典の記事は大変参考になりました。

    私見ですが GAWANT は EFHW と同じ給電機構(ドライバー)でドライブ出来るものの Off center fed antenna なのだと思います。
    同じハイインピーダンスエレメントであっても GAWANT のエレメントは僅かな輻射抵抗を持つコンデンサーで、 EFHW は抵抗なのではないでしょうか。
    私も数種類の GAWANT もどきを作って見ましたが、機材の関係で運良く最初に 1.4m のロッドアンテナと、マイクを握った状態の FT-817 の対地容量 ( 12pF,30pF弱 ) の測定から始めた為かトラブルは少なかったです。
    GAWANT は FT-817 (の筐体) をラジアルとする前提だったからでしょうか。
    とは言え 3.5MHz を含む 7MHz 用とし、 260pF のバリコンに合わせて巻数を決めてすんなりカバー範囲はクリアしたもののリンクコイルの巻数が一回では足りず二回では多過ぎる状態になり、幸いコアが T-68-2 を二つ重ねて使っていたため合わせ目から線を抜いてトロイダルコアに有るまじき 1.5 ターンにするというピンチも有りましたが。

    同調周波数が下がったのは GAWANT のエレメントは容量性である為 EFHW の計算に含まれていないエレメントの容量によるものだと思います。
    無線機のケースが高電圧になる原因はエレメントのドライブ電流を受け止めるには無線機の対地容量が小さ過ぎるからではないでしょうか。

    蛇足ながら、インピーダンスの高い小さな筐体に電流を流す事で発生する電圧を「阻止」する以外に、アルミのトレイなどを敷いて接続して電流を「逃がす」のも有りかと思います。

    7MHz や 3.5MHz だと長いエレメントを使いたくなりますが物理的要因以外に安定動作の為には無線機筐体の静電容量とのバランスが重要かと感じます。
    因みに 7MHz 用 2m の超短縮ダイポールを使った「本物」の EFHW や 50MHz , 144MHz 用の 90cm ( 50MHz では λ/4 より短く容量性、 144MHz では λ/4 より長く誘導性 ) のエレメントの物等作って見ましたが、 GAWANT 系は製作上非常に見通しが良いように感じます。
    集中乗数回路が主体だからでしょうか。

    • jh4vaj より:

      EFHWとGAWANTの動作原理はまったく違うと思います。EWHWは共振していますので理想状態なら抵抗分だけでしょうね。GAWANTはLC共振回路にヒゲをつけて輻射できるようにしたものだと思います。
      今ならNanoVNAなどが手軽に使えますから、またいじってみるのも面白そうです。