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A47 Revisited : 実機確認 — 電源部

A47式ヘッドフォンアンプの再考版の電源部のノイズフィルタの実機動作確認。ACアダプタのノイズがどの程度低減できているか、また、それがヘッドフォンアンプの出力にどの程度影響するか?

これまでの話はこちら。

準備

その前に、オシロスコープのプローブの先端をショートして、ノイズフロアの様子(20MHz帯域制限)。スペクトラム表示でだいたい-120dBV以下。ところどころヒゲが出てはいる。

使用したオシロスコープについてはこちらの記事。

ノイズ測定

電源の入力部、LCフィルタ通過後、オペアンプの電源端子の電圧の様子を見ていく。また、オペアンプの出力ノイズの様子も測定する。なお、信号入力なしの状態。

ACアダプタ1(12V)

何年か前に秋月電子で購入した12Vのアダプタ(スイッチング式)。型番はNP15-1S1212だけれど、今は販売ページに見当たらないのでディスコンなのだろう。

まず、入力の12Vのノイズの様子。かなり素直な感じで、約380kHz、84mVppくらいで、正弦波に近い。

LCフィルタ通過後。ノイズは3mVpp強程度まで低下。

次に、レールスプリッタで両電源化して、オペアンプの足での測定。

まず、正側。3mVpp強。

次に、負側。こちらも3mVpp強。正・負とも、もとの電源のLPF通過後のノイズがそのままきている感じ。もうちょっと落ちてくれることを期待したけれど、残念。

続いて、オペアンプ(NJM4580)からの出力。無入力信号で、負荷は66Ω+1200pF(程度)。電源のノイズがそのまま出てきている。言い換えれば、アンプではノイズは発生していない(電源のノイズに隠れる程度)。

可聴域レのノイズレベルは、全体的には-100dBV以下、山は-85dBVくらい。Stdev(標準偏差)で185μVくらい。

ACアダプタ2(9V)

9Vのスイッチング式アダプタ。これは比較的最近秋月で買ったもので、型番はAD-A90P250

先ほどと同じように、まずは、入力直後。こちらはかなり癖のあるノイズ。かなり早い周波数でスイッチング動作を行い、負荷が軽いとそれが間欠的になるようだ。ノイズ電圧は、110mVpp程度。

LCフィルタ通過後。7mVpp程度に低下。

オペアンプの足での測定。正側・負側ともに少し増えて8mVpp程度。

最後に、オペアンプ(NJM4580)からの出力。12Vのアダプタの場合と同様、無入力信号で、負荷は66Ω+1200pF(程度)。こちらも、電源のノイズがそのまま出てきているようだ。

可聴域レのノイズレベルは、全体的には-110dBV以下、スイッチングノイズと思われる28kHzあたりの山は-92dBV程度、Stdevで200μV程度。

ACアダプタ2(9V)– 対策

上のACアダプタ、ノイズ成分が多めなのでなんとかならないかと対策してみた。まず、結果から。

可聴域レのノイズレベルが全体的に下がって-120dBV以下、スイッチング周波数の山も少し下がって-96dBV程度、Stdevは116μV程度まで減少した。

やったのは、ACアダプタのケーブルにクランプコア(いわゆるパッチンコア)を付けたこと。手近にあったコアを三つ、それぞれ、二回巻き。一つ付けるごとにノイズレベルが下がっていった。

クランプコアでノイズが下がったというとは、コモンモードノイズが原因だったということだろう。これは、電源のノイズ(ディファレンシャルモード)はクランプコアを付けても下がらなかったことからもわかる。以下、DC入力、LPF通過後、オペアンプの電源端子の正と負。

鋭いスパイクが載っているように見えるけれど、オシロのグリッドに完全に一致しているので、信号(ノイズ)と見るには不自然。何かの設定じゃないかと思う。残念ながら詳細不明。

モバイルバッテリ(USB PD電源)

モバイルバッテリとトリガケーブル(15V)の組合せ。

このモバイルバッテリはかなり独特なノイズ。ランダムな大きなうねり(電圧変動)とスイッチングと思われる小さなノイズが合わさっている。大きなうねりと言っても実際の電圧幅はさほど大したことはなく、約41mVpp。

細かいノイズの様子。

LPF通過後。細かいノイズは取れるけれど、大きなうねりはそのまま残る(山谷が大きく見えるのは、上とは垂直軸スケールが違うため)。

オペアンプの足での正側と負側。

オペアンプからの信号出力。可聴域で、10kHzくらいまでは概ね-110dBV以下、それより上は概ね-120dBV以下、山は-105dBV程度。Stdevで180μVくらい。大きなうねりは見た目は気持ち悪いけれど、変化がゆっくり(立上り・立下りが急峻ではない)なのでオペアンプは対処でき、出力には表れない。

念のため、もっと上の周波数まで見た様子。MHzの領域に山があるが、それも-95dBVとかそういうレベル。

リニア電源

LM317を使った自作安定化電源(REGM06)でも見てみる。電圧は12V。

まず、電源入力部。当然ながらスイッチングノイズは存在せず、ノイズは3mVpp程度。

LPF通過。変化なしと言うか、変化しようがないと言うか。

レールスプリッタを通って、オペアンプのV+とV-。ここにも概ねそのまま来ている。

オペアンプからの信号出力。可聴域で、全体的には-120dBV以下、山は-110dBV程度。Stdevで130μVくらい。

ふと思い立って、電源スイッチをオフにしてみた。出力端子のノイズに変化なし。

バッテリ

この際なので、電池運用での状況も測定しておく。18650を三本直列にしたもので11Vくらい。

電源入力。ノイズは1.2mVppくらい。今、記事を書きながら気づいたのだけど、バッテリでの動作では、ノイズのスペクトルはすべて可聴域程度(センタ25kHz、スパン60kHz)で測定していた。

LPF通過後。

オペアンプの電源端子、正・負。

信号出力。ノイズは全体的には-120dBV以下、山は-110dBVくらい、リニア電源とほとんど同じ。しかし、Stdevでは98μVと、リニア電源よりも低い。

ノイズ量の評価

まず、ヘッドフォンの感度に関して、dB/mWとdB/Vの換算。

感度 (dB/mW)16Ω (dB/V)32Ω (dB/V)64Ω (dB/V)
90108.0104.9101.9
95113.0109.9106.9
100118.0114.9111.9
105123.0119.9116.9
110128.0124.9121.9

次に、音量(音圧レベル)と聞こえ方。この表はGeminiによるまとめ(上の換算表も)。

音圧レベル (dB SPL)聴感上の感じ方(ヘッドフォン装着時 / 空間の目安)具体的な音の例
10 dB【全く聞こえない・無音】人間の聴覚では完全に無音と認識されるレベル。非常に静かな呼吸音、雪の降る音
15 dB【聴感限界の境界】無音環境で極限まで集中してようやく気配を感じる程度。高品質な録音スタジオの暗騒音
20 dB【極めて静か】深夜の寝室など、静寂の中で意識を向ければ聞こえるレベル。木の葉の触れ合う音、遠くの時計の秒針
25 dB【静か】深夜の自室などで、意識しなくてもかすかにノイズに気づくレベル。静かな住宅街、鉛筆で文字を書く音
30 dB【明らかに聞こえる】はっきりとノイズと認識でき、耳障りに感じ始める水準。小さなささやき声、深夜の郊外、静かな図書館

例として、12Vのアダプタでの無音時出力の図を再掲。

全体的には、10kHz辺りまでは-110dBV以下、それより上は-100dBV以下というところ。これを例えば105dB/Vのヘッドホンで聞くと、105-100=5[dB SPL]で、何も聞こえないレベル。125dB/Vの高感度イヤフォンなら25[dB SPL]なので、耳をすませば聞こえる可能性がある。

電源起因と思われる50Hzあたりが-85dBV程度。これだと105dB/Vのヘッドフォンでも20[dB SPL]ということになるが、等ラウドネス曲線を考慮すると50Hzと言った低域では耳の感度が落ちるのでおそらく聞こえない。高感度イヤフォンなら知覚できるレベルかも知れない。

また、22kHzあたりにもピークがあって、その値は-90dBVくらい。しかし、22kHzはおそらくほとんどの人には聞こえない。

電源品質と歪み

電源品質が悪ければ当然歪みが増えるだろう。試しに、1kHzの正弦波(0.4Vpp — 信号源はAnalog Discovery 2 + WaveFormsのWavegen)を入力して、出力の倍音成分が変化するか見てみる。非常に簡単なテストだけど、とりあえず、やってみる。

まず、入力信号。1kHzの基音と、その倍音がいくつか見える。

では、出力。まずは、電源はバッテリ(18650✕3)。アンプのゲインが約6dBなのでその分上がっただけで、全体の傾向はほぼ同じ。もとのスペクトルと特段の違いはない。あったら困るが。

続いて、9VのACアダプタ。違いはない。アンプの性能としては良い結果だけど、ある意味残念。

続いて、このアダプタにクランプコアを三つ付けたもの。これも変化なし。

本当は、「バッテリと比べてACアダプタだと若干歪んでしまうが、クランプコアでそれが改善する」というのを期待したのだけど、クランプコアを付けなくてもこの測定では違いがないという結果だった。出力云々以前に入力信号の段階でそれなりに倍音成分が含まれているから分かりにくいと言うか。倍音以外の影響が出るとしても、こんな簡単な測定でハッキリわかるようであれば、聴覚上でも明らかにわかるだろう(それは感じない)。

まとめ

ACアダプタにはクランプコアをしっかり付けるのが、ノイズ対策として有効。当たり前ではあるけれど、測定でその結果が見えたことはとても面白い。


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