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トロイダルコアの巻数とインダクタンスを測定

uBITX用のLPFを設計するにあたり、まずは、トロイダルコアの巻数と目的周波数でのインダクタンスを調べておく。

測定方法等

測定にはOSA103 Miniのアンテナアナライザモードを使う。カーソル上のインダクタンスが読める。事前にOSL(Open, Short, Load)キャリブレーションを行う。

測定対象のトロイダルコアは、uBITXで使われているコアはT30-6だけれども、入手の都合でT37-6とT50-6。ワイヤはØ0.4mmのポリウレタン線。

下は、T50-6に40回巻きで2MHzでのインダクタンスを測定している様子。

こちらは、T50-6に30回巻きで自己共振周波数(Xsが(ほぼ)0Ωのポイント)を測定している様子。

参考として、計算値DE-5000での測定値も併記する。

測定結果

凡例

まずは、表の凡例。

  • 見出し
    • 計算値: 計算で求めたインダクタンス
    • DE-5000: DE-5000での測定結果(100kHzでの測定)
    • 2, 5, 10…: OSA103 Miniでの測定周波数 [MHz]
    • 自己共振: Xsが0となる周波数 [MHz](これより上はキャパシタンスとして測定される)
  • 単位
    • 巻数: 回
    • インダクタンス: µH
    • 自己共振周波数: MHz
以下はほとんど失敗の記録。最終結果(正しい答え)はこちら

T37-6

巻数 計算値 DE-5000 2 5 10 15 20 25 30 35 40 自己共振
30 2.70 2.84 2.90 2.97 3.16 3.55 4.25 6.09 16.0 32.5
29 2.52 2.70 2.77 2.79 2.99 3.32 3.89 5.31 11.1 33.6
28 2.35 2.52 2.61 2.62 2.80 3.07 3.64 4.72 8.66 34.3
27 2.19 2.37 2.47 2.48 2.62 2.89 3.30 4.23 7.24 1.82 35.1
26 2.03 2.21 2.28 2.31 2.44 2.66 3.02 3.78 6.02 16.4 35.9
25 1.88 2.09 2.19 2.22 2.32 2.52 2.85 3.50 5.25 15.0 36.5
24 1.73 1.97 2.04 2.06 2.14 2.31 2.59 3.11 4.40 10.1 37.4
23 1.59 1.89 1.95 1.97 2.05 2.21 2.48 2.94 4.03 9.29 37.7
22 1.45 1.72 1.80 1.82 1.88 2.02 2.22 2.60 3.53 6.72 38.7
21 1.32 1.62 1.68 1.71 1.77 1.88 2.06 2.39 3.10 5.41 39.4
20 1.20 1.52 1.57 1.60 1.65 1.74 1.89 2.17 2.78 4.50 0.95 40.2

最初に30回巻いて、徐々にほどきながら測定。リード線が長くなりすぎたので、別のコアに20回巻いて続ける。

巻数 計算値 DE-5000 2 5 10 15 20 25 30 35 40 自己共振
20 1.20 1.30 1.38 1.40 1.44 1.52 1.65 1.86 2.29 3.39 4.01 41.4
19 1.08 1.22 1.28 1.30 1.33 1.39 1.49 1.65 1.95 2.63 4.03 42.7
18 0.97 1.13 1.18 1.19 1.22 1.27 1.34 1.47 1.70 2.16 3.24 43.5
17 0.87 1.05 1.09 1.11 1.13 1.17 1.23 1.34 1.51 1.86 2.70 44.6
16 0.77 0.97 1.01 1.02 1.03 1.06 1.11 1.20 1.34 1.61 2.22 45.3
15 0.68 0.91 0.91 0.93 0.94 0.95 1.00 1.06 1.18 1.37 1.85 46.8
14 0.59 0.85 0.83 0.84 0.85 0.86 0.90 0.95 1.04 1.18 1.53 48.2
13 0.51 0.76 0.78 0.79 0.80 0.82 0.84 0.89 0.96 1.09 1.39 48.9
12 0.43 0.64 0.74 0.74 0.74 0.75 0.77 0.81 0.88 0.98 1.22 49.8
11 0.36 0.59 0.67 0.66 0.66 0.68 0.69 0.72 0.77 0.85 1.02 50.9
10 0.30 0.53 0.62 0.62 0.62 0.63 0.65 0.67 0.71 0.78 0.93 51.8
9 0.24 0.49 0.57 0.56 0.57 0.57 0.58 0.60 0.64 0.69 0.80 52.5
8 0.19 0.43 0.52 0.52 0.52 0.53 0.54 0.56 0.59 0.63 0.72 53.8
7 0.15 0.39 0.48 0.48 0.48 0.48 0.49 0.50 0.52 0.56 0.64 54.8
6 0.11 0.36 0.45 0.45 0.45 0.46 0.46 0.47 0.49 0.52 0.59 55.7
5 0.07 0.33 0.44 0.43 0.43 0.43 0.44 0.45 0.46 0.49 0.55 56.4

最初のコアと二つ目のコアの両方で20回巻きでの測定を行ったが、結果はだいぶ異なっている。リード線長の影響か?巻数は複数回数え直したので間違ってはいないはず。スタート時はどちらも計算値に比較的近く、ほどくに連れて乖離が大きくなっていることからも、リード線が長くなったことの影響だろうと考えられる。そうすると、5回巻きの測定結果はほとんどあてにならないだろう。またいずれ測定し直すか?

T50-6

巻数 計算値 DE-5000 2 5 10 15 20 25 自己共振
40 6.40 6.70 6.74 7.04 8.56 11.4 12.2 22.3
39 6.08 6.44 6.48 6.75 8.00 10.8 12.8 22.5
38 5.78 6.20 6.18 6.44 7.53 10.2 13.0 22.8
37 5.48 5.91 5.90 6.11 7.09 9.55 13.0 23.2
36 5.18 5.67 5.70 5.90 6.79 9.04 12.4 23.8
35 4.90 5.44 5.46 5.64 6.53 8.41 12.1 24.2
34 4.62 5.20 5.16 5.33 6.09 7.87 11.1 24.5
33 4.36 5.03 4.92 5.06 5.73 7.35 10.6 2.25 25.2
32 4.10 4.81 4.79 4.93 5.58 7.14 9.98 6.19 25.5
31 3.84 4.63 4.54 4.67 5.26 6.64 9.34 11.2 26.1
30 3.60 4.43 4.41 4.53 5.06 6.27 8.64 13.0 26.5

T37-6にしてもT50-6にしても、周波数の影響が非常に大きい。例えば、T50-6 40回巻きの場合、DE-5000の測定値とOSA103 Miniでの2MHzにおける測定値はどちらも約6.7µHだけれとも、20MHzでは12.2µHと、約二倍近い。周波数によってこんなにも変化するものなのだろうか?LPFの設計に大いに影響する。

プローブのせいか

ここで、ふと、プローブのせいかと思い、別の方法(変換コネクタ)で接続してみた。

もちろん、OSLキャリブレーションを改めて行った。

T37-6 30回巻きの測定結果。

巻数 計算値 DE-5000 2 5 10 15 20 25 30 35 40 自己共振
30 2.70 2.84 2.84 2.88 2.91 3.00 3.07 3.29 3.80 4.96 4.11 42.0

やはり、こちらだと、周波数による影響は少ない。

念のため、先程のプローブでの測定結果(30回巻きだけ)を再掲。

巻数 計算値 DE-5000 2 5 10 15 20 25 30 35 40 自己共振
30 2.70 2.84 2.90 2.97 3.16 3.55 4.25 6.09 16.0 32.5

さらに、変換コネクタも使わずにOSA103 Miniのコネクタに直接差し込んでみた(手で押さえた)。

巻数 計算値 DE-5000 2 5 10 15 20 25 30 35 40 自己共振
30 2.70 2.84 2.81 2.77 2.73 2.66 2.56 2.43 2.36 2.43 2.61 47.6

これだと、先のような周波数による影響は見られない。と言うか、プローブ等を使った測定では周波数が上がるとインダクタンスは上昇していたが、直接つないだ場合は周波数が上がるとインダクタンスは逆にやや下がる方向。手で押さえたため、人体による影響か?指が触れていたのはGND側だけではあるけれど。

しかし、OSLキャリブレーションを行ってもちゃんとした測定結果が得られないってどういうこと?

キャリブレーションやり直し

ここで気づいた。OSLキャリブレーションをやった結果をファイルに保存しなきゃいけないのではないかと。

キャリブレーションが完了したときのウィンドウがこれ。

これまでは、これでそのままExitしていた。キャリブレーションは都度やればいいと思っていたので、ファイルには保存しなかった(ファイルに保存しても、どんな条件でのキャリブレーションかがわからなくなりそうだから)。

ここで、試しにファイルに保存してみた。

そうすると、ファイルに保存すると同時にそのファイルが読み出されたようす。

これで、改めて、T37-6 30回巻きの測定してみる。

巻数 計算値 DE-5000 2 5 10 15 20 25 30 35 40 自己共振
30 2.70 2.84 2.76 2.79 2.81 2.86 2.92 3.03 3.11 3.34 3.78 75.1

これは実にそれらしい結果。周波数による変化はあまりない(ゼロでもないけど)。なお、使ったプローブは一番最初のものと同じ、同軸ケーブルの先にみのむしクリップを付けた自作のもの。

キャリブレーションは、実施するだけではダメで、ファイルに保存しないとOSA103 Miniに反映されないということか。

結局のところ、DE-5000での測定結果とさほど違わないことがわかった。いい勉強になった、ということにしておこう…。


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